説明

黒色腫を検出するための方法および試薬

【課題】 黒色腫に対する術中アッセイの感度および特異度を改善すること。
【解決手段】 特定遺伝子の特異的発現がカットオフ値を超えて黒色腫を示すか否かを決定することによって、悪性メラニン形成細胞を同定するためのアッセイを行う。該アッセイは、リンパ節組織について手術中に行うことができる。

【発明の詳細な説明】
【開示の内容】
【0001】
〔発明の背景〕
皮膚の悪性黒色腫(malignant melanoma)は、一般的な進行性ガンであり、発生率が増大している。そのことは、重大な医療問題であり、2004年の米国において、新たに55,100人を超える患者が予想されており、死亡率は約14.5%である[キャンサー・ファクツ・アンド・フィギュアズ(Cancer Facts and Figures)(2003),米国癌協会(American Cancer Society)(2003)]。黒色腫の発生率は、他のあらゆる悪性疾患の発生率に比べて、より速く上昇し続けている[ド・ブラウト(De Braud)等(2003)]。初期の局所黒色腫の予後(prognosis)は、有利であり、5年全生存率(5-year overall survival)は90%を超えるが、領域リンパ節(regional lymph node)が絡んでくると、5年全生存率は10〜46%に低下する[ボールチ(Balch)等(2001)]。したがって、領域リンパ節(LN)の状態(status)は、黒色腫患者が生存する場合の最も重要な予後因子(prognostic factor)となる。前哨リンパ節(SLN:見張りリンパ節)技術の導入[モートン(Morton)(1992)]によって、微小転移(micrometastasis:微小癌組織の転移)検出の感度は、ヘマトキシリン・エオジン染色(hematoxylin and eosin)(H&E)染色法単独と比べて、増大してきた[ユー(Yu)等(1999)およびメッシース(Messina)等(1999)]。それにもかかわらず、組織学的分析は、免疫組織化学(IHC)によって改善されたとしても、腫瘍細胞を認識する光学顕微鏡法の能力によって制限されている。リンパ節中の黒色腫をより高感度で検出するために、最近、逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(reverse transcription-polymerase chain reaction)(RT−PCR)分析が提案されてきた。多くの研究によると、十分に特性化されたメラニン形成細胞 (melanocyte:メラノサイト)特異マーカー(例えば、チロシナーゼ(tyrosinase)およびMART−1)を用いた場合、リンパ節中にこれらの遺伝子転移が存在することが例証されたか、さもなければ、日常の組織学およびIHCによって陰性であることが分かった[シャイバーズ(Shivers)等(1998)およびクオ(Kuo)等(2003)]。しかし、これらの遺伝子は、腫瘍細胞に特異的ではなく、良性組織と悪性組織とを識別するのに使用することができない。実際に、それらの遺伝子は、良性カプセル母斑(capsular nevi)の存在下、偽陽性の結果を生じさせた[タケウチ(Takeuchi)等(2004)、スターズ(Starz)等(2003)およびガッツマー(Gutzmer)等(2002)]。良性母斑が、黒色腫の前哨リンパ節において稀な事象ではないということを考慮すれば、現行のRT−PCRアッセイは、黒色腫の微小転移を診断するのに臨床的には有用でない。最近の研究では、アッセイの特異性を増大させるために、RT−PCRアッセイのためのガン特異マーカーを含むマルチマーカー・パネル(multi-marker panel)が提案されている[フーン(Hoon)等(2004)]。新規な黒色腫特異マーカーの同定は、依然として黒色腫研究の重要な問題の1つである。
【0002】
幾種類かのタンパク質は、黒色腫およびそれの転移部と関連することが示された。これらのタンパク質またはそれらの誘導体は、転移を同定するための免疫組織化学検査において使用されてきた。それらには、L1CAM[ティース(Thies)等(2002)、フォーゲル(Fogel)等(2003)]およびS−100[ディエゴ(Diego)等(2003)]が包含される。
【0003】
転移性黒色腫の検出感度を増大させるために、核酸試験が提案された(米国特許公報第2002/0110820号および同第2003/0232356号)。研究には、MAGE3、チロシナーゼ(tyrosinase)、MART−1、MITF−MもしくはIL−1、R1、エンドセリン(endothelin)−2、エフリン(ephrin)−A5、IGF結合タンパク質7、HLA−A0202重鎖、アクティビン(Activin)A(βAサブユニット)、TNF RII、SPC4、CNTF Rα、または、gp100(HMB45)遺伝子を包含するマーカーが使用された[ボスティック(Bostick)等(1999)、フーン(Hoon)等(2001)、パルミエーリ(Palmieri)等(2001)、ライトソン(Wrightson)等(2001)、ガッツマー等(2002)、デービズ(Davids)等(2003)、スターズ等(2003)、リンボルディ(Rimboldi)等(2003)、クック(Cook)等(2003)、ライントゲン等(2004)、米国特許公報第2002/0098535号および同第2003/0049701号、米国特許第5,512,437号、同第5,512,444号、同第5,612,201号、同第5,759,783号、同第5,844,075号、同第6,025,474号、同第6,057,105号、同第6,235,525号、同第6,291,430号、同第6,338,947号、同第6,369,211号、同第6,426,217号、同第6,475,727号、同第6,500,919号、同第6,527,560号、同第6,599,699号明細書、国際公開番号(WO)96/29430号明細書]。これらのマーカーは、測定された場合、黒色腫の診断に単独で用いるのに十分であることは見出だされていない[リッチョーニ(Riccioni)等(2002)、ガッツマー等(2002)、デービズ等(2003)、ゴイドス(Goydos)等(2003)およびプリチャード(Prichard)等(2003)]。
【0004】
これらのマーカーの多くは、他の新生物[例えば、明細胞肉腫、胆道ガンおよび胃ガンに対するME20M(GP100)]をも標示することが分かってきた[ヒラガ(Hiraga)等(1997)、オカダ(Okada)等(2001)、オカミ(Okami)等(2001)、アントネスク(Antonescu)等(2002)、シーガル(Segal)等(2003)]。MAGE3は、乳房、肝細胞、腎臓、神経、肺および食道の新生物を包含する多数の新生物をも標示する[ヤマナカ(Yamanaka)等(1999)、オオカ(Ooka)等(2000)、スズキ(Suzuki)等(2000)、チューン(Cheung)等(2001)およびワイザー(Weiser)等(2001)]。幾種類かの黒色腫抗原エンコーディング遺伝子(melanoma antigen-encoding genes)も、肺ガンにおいて発現する[ヨシマツ(Yoshimatsu)等(1998)]。
【0005】
これらのマーカーは他のガンおよび良性メラニン形成細胞において陽性発現を示したので、それらマーカーは、高感度であるが、非特異性であることが分かった。加えて、チロシナーゼは、正常リンパ節中に存在するシュワン細胞(Schwann cells)において発現する。特異性のみが欠如しているので、新たなマーカーまたは追加のマーカーを用いるアッセイが必要となる。H&E(ヘマトキシリン・エオジン染色)組織学および免疫組織化学検査(IHC)は、依然として、「前哨リンパ節中の黒色腫および母斑細胞を同定するための最も基準になる検査(gold standard)」である[スターズ等(2003)]。術中セッティング(intra-operative setting)における検出組織によって、これの必要性はなお更に重大となる。
【0006】
リンパ節関連事項は、多くの充実性腫瘍(solid tumors)における最強の予後因子であり、リンパ節の微小転移の検出は、病理学者および外科医にとって大きな関心事である。現行のリンパ節評価は、ヘマトキシリン・エオジン染色(H&E)染色による組織切片(tissue sections)の顕微鏡検査と免疫組織化学検査(IHC)とを包含し、しかも、3つの大きな制限:(a)細胞の小さいフォーカス(foci)は容易に見落とされること;(b)結果は、速やかには入手することができないこと、これは、前哨リンパ節の処置におけるあらゆる陽性結果は、腋窩リンパ節を除去するための第2の手術を必要とすることを意味する;および、(c)僅かに1つまたは2つの組織切片が調べられること;を受け、したがって、各々のリンパ節の大部分は、検査されないままとなる。シリアルセクショニング(serial sectioning:連続切片化)は、サンプリング誤差を克服するのに役立つことができ、また、免疫組織化学検査は、細胞の小さいフォーカスを同定するのに役立つことができる。しかし、この組合せは、日常分析としては、高コストであり、時間がかかる。
【0007】
領域リンパ節を切開することについての外科的決定は、リンパ節の術中凍結切片分析(intra-operative frozen section analysis)に基づく場合がある。しかし、これらの方法の感度は、比較的乏しく、標準ヘマトキシリン・エオジン染色(H&E)病理学と比べて50〜70%の範囲であり、高い率で第2の手術が必要となる。したがって、病理学者らは通常、黒色腫患者に対して、術中凍結切片分析もタッチプリント細胞学的分析(touch print cytology analysis)も実施していない。黒色腫に対する術中アッセイの感度および特異度が改善されれば、腫瘍学に著しい利益をもたらすであろう。
【0008】
生体試料における数千もの遺伝子の発現を同時に監視するために、高密度マイクロアレイが用いられてきた。研究の結果、良性病変および悪性病変において特異的に発現する遺伝子だけでなく、予後因子としての価値(prognostic value)があるかもしれない遺伝子も同定された[ルオ(Luo)等(2001)およびワン(Wang)等(2004)]。8,150cDNAsのためのプローブ(probes)を備えたマイクロアレイ(microarray)を用いて、悪性黒色腫の遺伝子発現プロフィール解析(gene expression profiling)が行われた[ビットナー(Bittner)等(2000)]。これらの研究者は、進行性腫瘍の挙動と関連しているかもしれない幾つかの遺伝子を同定した。最近の研究では、少数種の黒色腫細胞株と正常メラニン形成細胞株との遺伝子発現プロフィールを比較することによって、黒色腫中で変調された(modulated)、特異的に発現する遺伝子と経路(pathways)とを同定することができた[タケウチ(Takeuchi)等(2004)]。
【0009】
〔発明の概要〕
臨床的に関連のある広範囲な組織試料に関する遺伝子発現プロフィール解析(gene expression profiling)が、本発明によって提供される。22,000のプローブセットを有するアフィメトリクス(Affymetrix)Hu133Aマイクロアレイによって、45個の初期悪性黒色腫組織、18個の良性皮膚母斑組織、および、7個の正常皮膚組織からの全RNAをハイブリダイズさせた。良性組織と比較し悪性黒色腫に対して特異的に発現した複数の遺伝子を同定した。特異的に発現したそれら遺伝子の経路解析によって、神経組織の成長とアミロイドプロセシング・シグナリング経路(signaling pathway)の活性化とに関連する遺伝子の過剰表現(over-representation)が明らかとなった。ワンステップの定量的RT−PCRアッセイを用いて、初期悪性黒色腫試料、良性母斑試料、黒色腫リンパ節転移部試料および黒色腫非含有リンパ節試料を含む臨床的に関連のある諸試料のパネルにおいて、2つの黒色腫特異遺伝子(PLABおよびL1CAM)の組合せについて試験した。
【0010】
本発明は、組織試料を得る段階と、分化因子(differentiation factor)の(PLAB,MIC1)(配列ID番号:1)およびL1細胞粘着分子(cell adhesion molecule)の(L1CAM)(配列ID番号:2);または、PLAB、L1CAMおよび神経栄養性チロシンキナーゼ受容体(neurotrophic tyrosine kinase receptor)3型の(NTRK3)(配列ID番号:3)、に対応するmRNAをコードする遺伝子の、前記試料中の発現レベルを測定する段階と、によって黒色腫を同定する方法であって、所定のカットオフレベル(cut-off levels)を超える前記遺伝子発現レベルが、前記試料中に黒色腫が存在することを示す該方法を提供する。本発明は更に、組織試料を得る段階と、プライマー/プローブのセットの配列ID番号:4〜6もしくは配列ID番号:7〜9、および、配列ID番号:10〜12もしくは配列ID番号:13〜15;または、配列ID番号:4〜6もしくは配列ID番号:7〜9、および、配列ID番号:10〜12もしくは配列ID番号:13〜15、および、配列ID番号:16〜18によって認識されるmRNAをコードする遺伝子の、前記試料中の発現レベルを測定する段階と、によって黒色腫を同定する方法であって、所定のカットオフレベルを超える前記遺伝子発現レベルが、前記試料中に黒色腫が存在することを示す該方法を提供する。
【0011】
本発明はまた、組織試料を得る段階と、PLABおよびL1CAM;または、PLAB、L1CAMおよびNTRK3、をコードする遺伝子の、前記試料中の発現レベルを測定する段階とによって、悪性メラニン形成細胞を良性メラニン形成細胞から識別する方法であって、所定のカットオフレベルを超える前記遺伝子発現レベルが、前記試料中に黒色腫が存在することを示す該方法を提供する。
【0012】
本発明は更に、組織試料を得る段階と、プライマー/プローブのセットの配列ID番号:4〜6もしくは配列ID番号:7〜9、および、配列ID番号:10〜12もしくは配列ID番号:13〜15;または、配列ID番号:4〜6もしくは配列ID番号:7〜9、および、配列ID番号:10〜12もしくは配列ID番号:13〜15、および、配列ID番号:16〜18によって認識される遺伝子の、前記試料中の発現レベルを分析し測定する段階とによって、悪性メラニン形成細胞を良性メラニン形成細胞から識別する方法であって、所定のカットオフレベルを超える前記遺伝子発現レベルが、前記試料中に黒色腫が存在することを示す該方法を提供する。
【0013】
本発明はまた、患者から組織試料を得る段階と、PLABおよびL1CAM;または、PLAB、L1CAMおよびNTRK3、をコードする遺伝子の、前記試料中の発現レベルを分析し測定する段階とによって、前記患者を処置するプロトコルを決定する方法であって、所定のカットオフレベルを超える前記遺伝子発現レベルが、前記試料中に黒色腫が存在することを示す該方法を提供する。
【0014】
本発明は更に、患者から組織試料を得る段階と、プライマー/プローブのセットの配列ID番号:4〜6もしくは配列ID番号:7〜9、および、配列ID番号:10〜12もしくは配列ID番号:13〜15;または、配列ID番号:4〜6もしくは配列ID番号:7〜9、および、配列ID番号:10〜12もしくは配列ID番号:13〜15、および、配列ID番号:16〜18によって認識される遺伝子の、前記試料中の発現レベルを分析し測定する段階とによって、前記患者を処置するプロトコルを決定する方法であって、所定のカットオフレベルを超える前記遺伝子発現レベルが、前記試料中に黒色腫が存在することを示す該方法を提供する。
【0015】
本発明はまた、追加的なマーカー遺伝子および対照遺伝子であって、それらの発現が特許請求の範囲に記載の諸方法の助けとなる該遺伝子を提供する。これらの追加的遺伝子には、発現上昇する配列ID番号:29〜467、および、発現低下する配列ID番号:468〜978が包含される。
【0016】
第1のマーカーは、PLABである場合があり、本明細書では、あらゆる変異株(variant)、対立遺伝子(allele)、等をコードする遺伝子として規定され、配列ID番号:1を包含する。PLABはまた、パーラルカー(Paralkar)等(1998)に記述されており、受入番号AF003934によって表わされる。PLABはまた、プライマー/プローブセットの配列ID番号:4〜9によって認識されるmRNAをコードする遺伝子として規定される。
【0017】
第2のマーカーは、L1CAMである場合があり、本明細書では、あらゆる変異株、対立遺伝子、等をコードする遺伝子として規定され、配列ID番号:2を包含する。L1CAMはまた、ハスペル(Haspel)等(2003)および米国特許第6,107,476号明細書に記述されており、受入番号NM_000425によって表わされる。L1CAMはまた、プライマー/プローブセットの配列ID番号:10〜15によって認識されるmRNAをコードする遺伝子として規定される。
【0018】
本発明は更に、細胞試料中に黒色腫が存在するか否かを決定するアッセイを行うためのキットにおいて、核酸増幅用および検出用の試薬を備えた、キットを提供する。
【0019】
本発明はまた、本発明の方法において得られたPCR生成物の増幅および検出を行うためのプライマー/プローブのセットを提供する。これらのセットには、次のもの:

が包含される
【0020】
本発明は更に、本発明の諸方法において利用されるPCR法によって得られるアンプリコン(amplicon)を提供する。これらのアンプリコンには、次のもの:

が包含される
【0021】
本明細書に記述される他の遺伝子には、発現上昇するマーカー(配列ID番号:29〜467)、発現低下するマーカー(配列ID番号:468〜978)、MART1(配列ID番号:980)、ME20M(GP100;配列ID番号:981)およびMAGE−3(配列ID番号:982)、ならびに、それらの発現を検出するのに使用される様々なプライマーおよびプローブ(配列ID番号:983〜1011)が包含される。
【0022】
〔詳細な記述〕
本発明は、黒色腫を定性的かつ定量的に同定する方法と、悪性黒色腫を良性黒色腫から識別する方法と、不確定な病理学的特徴を有する色素細胞性病変(melanocytic lesions)を診断する方法と、黒色腫患者を処置するプロトコルを決定する方法とを提供する。これらの方法は更に、患者の予後と、患者の監視と、薬剤の開発とを行う場合の手助けとなる。それらの方法は、本明細書で提供されるmRNAsをコードする様々なマーカー遺伝子の発現レベルを分析し測定する段階であって、所定のカットオフレベルを超える遺伝子発現は、分析された試料の中に悪性メラニン形成細胞が存在することを示す該段階に基づく。
【0023】
皮膚の黒色腫は、発生率が増大している一般的な進行性ガンである。黒色腫特異の統制解除遺伝子(deregulated genes)を同定することによって、リンパ節(LN)の病期診断アッセイ(staging assays)を行うための分子マーカー(molecular markers)と、更には、黒色腫の腫瘍形成(tumorigenesis)に関する洞察性とを提供することができるであろう。45個の初期の黒色腫の試料と、18個の良性皮膚母斑の試料と、7個の正常皮膚組織の試料とから分離した全てのRNAを、2,2000のプローブセットを有するアフィメトリクス(Affymetrix)U133Aマイクロアレイで解析した。階層的クラスタリング(Hierarchical clustering)によって、良性母斑試料および正常皮膚試料から黒色腫試料を明確に分離し得ることが明らかとなった。悪性黒色腫に関連する新規な遺伝子を同定した。初期悪性黒色腫の試料、良性母斑の試料、および、正常皮膚の試料と、更には、悪性黒色腫のリンパ節転移部、および、黒色腫非含有リンパ節とに関するワンステップ定量(one-step quantitative)RT−PCRアッセイによって、2種類の黒色腫特異遺伝子、PLABおよびL1CAM、の特異的遺伝子発現(differential gene expression)について試験を行った。それらのマーカーの性能を、従来の黒色腫マーカー(例えば、チロシナーゼ(tyrosinase)、gp100およびMART1)と比較した。それらの結果によって、RT−PCRアッセイにおいてPLABおよびL1CAMの組合せを用いて、良性メラニン形成細胞または悪性メラニン形成細胞を含有する、臨床的に関連のある複数の試料を識別することができることが例証された。
【0024】
高密度cDNAおよびオリゴヌクレオチドのマイクロアレイ(microarrays)によって、数千個の遺伝子の発現を同時に監視することができる。マイクロアレイ技術は、mRNAの存在量の定量的測定を提供し、しかも、遺伝子発現に基づきマーカーを発見するための道具(tool)として容認された。ガン研究の関連では、マイクロアレイ解析によって、良性病変および悪性病変、様々な種類のガンにおいて特異的に発現する遺伝子、または、予後因子として意義(prognostic significance)を有する遺伝子が同定された[ルオ(Luo)等(2001)、スー(Su)等(2001)、ヘンシャル(Henshall)等(2003)およびワン(Wang)等(2004)]。悪性黒色腫に関する最初の遺伝子発現プロフィール解析では、8,150個のcDNAのためのプローブを有するマイクロアレイが使用され、進行性腫瘍の挙動に関連するかもしれない遺伝子が同定された[ビットナー(Bittner)等(2000)]。彼らの研究で分析された試料には、正常または良性のメラニン形成細胞を含有する組織が含まれていなかったので、悪性黒色腫に特異的に発現した遺伝子は同定されなかった。良性母斑中のメラニン形成細胞含有量は、正常皮膚とは著しく違って、黒色腫中のメラニン形成細胞含有量に近い。
【0025】
もう1つの研究では、黒色腫または良性母斑から得られた2つのプール試料(pooled samples)はcDNAアレイに対して雑種形成が行われ、黒色腫由来試料または母斑由来試料に選択的に発現した遺伝子が見出だされた[セイコラ(Seykora)等(2003)]。他の研究者らは、黒色腫の遺伝子発現を監視するために、黒色腫細胞株に基づいて作り出されたSAGE(連続遺伝子発現解析)ライブラリーの解析またはハイブリッドサブトラクション(subtractive hybridization:差引きハイブリッド形成法)を使用した[ヒップフェル(Hipfel)等(2000)およびウィーララトナ(Weeraratna)(2004)]。最近、少数種の黒色腫細胞株とメラニン形成細胞株との遺伝子発現プロフィールを比較することによって、黒色腫中で変調された(modulated)、特異的に発現する遺伝子と経路(pathways)とが同定された[フック(Hoek)等(2004)]。これらの研究によって、黒色腫の遺伝的特徴のための堅実な基礎は提供されるが、黒色腫を良性組織から明瞭に識別することのできるマーカーは全く存在しない。現在使用されている幾種類かのマーカー(例えば、チロシナーゼおよびMart−1)は、良性組織と悪性組織とを識別することができない[タケウチ等(2004)]。結果的に、これらのマーカーは、使用法が、疾患の、リンパ節に基づく術中病期診断のような用途に限定されてきた。
【0026】
悪性黒色腫および良性色素細胞性病変から十分なRNA試料を入手することが困難であること、組織が不均質であること、ならびに、精製RNA中にメラニン(melanin)が存在することは、これらの研究において依然として主要問題のままである。本明細書に開示される研究では、45個の初期悪性黒色腫と18個の良性皮膚母斑と7個の正常皮膚組織とから分離した全てのRNAを、2,2000のプローブセットを有するアフィメトリクス(Affymetrix)Hu133Aマイクロアレイで雑種形成を行った。修飾RNAの抽出法は、マイクロアレイ・ハイブリダイゼーションのシグナル(microarray hybridization signals)を増大させる、メラニン非含有RNA試料を生成するために開発された。階層的クラスタリング(Hierarchical clustering)によって、良性母斑試料および正常皮膚試料から黒色腫試料を明確に分離し得ることが明らかとなった。マイクロアレイの有意差分析(Significance Analysis of Microarray)(SAM)法、t−検定、および、百分位数分析(percentile analysis)によって、黒色腫試料中の439種の発現上昇した遺伝子(配列ID番号:29〜467)と、511種の発現低下した遺伝子(配列ID番号:468〜978)とを同定した。更に、十分に特性化された遺伝子[例えば、me20m(gp100)、メラノコーチン受容体1およびL1CAM]と、NTKR3およびPLABを包含する、以前は黒色腫と関係のなかった新規な多くの遺伝子とを同定した。特異的に発現する遺伝子の経路解析(pathway analysis)によって、神経組織の成長および機能、アミロイドプロセシング(amyloid processing)、ならびに、インテグリンシグナリング(integrin signalling)の経路に関連する遺伝子の過剰表現(over-representation)が明らかになった。それらの選定された遺伝子の特異的発現を確認するために、RT−PCRアッセイを行った。
【0027】
提供される方法は、黒色腫の転移を検出するのに十分な特異度と感度とを有する。利用可能な現行方法と比べると、ヘマトキシリン・エオジン染色(H&E)および免疫組織化学(IHC)の伝統的方法は、臨床的に受け入れられることが示されるものの、PCR法は、本発明より前には受け入れられなかった。表1は、特許請求の範囲で請求される本発明より前の現行方法の欠点と利点とを示す。
【0028】
【表1】

本発明において、特異性は、H&EおよびIHCの陰性リンパ節との比較に基づき、好ましくは少なくとも95%であり、更に好ましくは特異性は少なくとも97%であり、最も好ましくは特異性は少なくとも99%である。感度は、H&EおよびIHCの陽性リンパ節との比較に基づき、好ましくは少なくとも80%であり、更に好ましくは感度は少なくとも85%であり、最も好ましくは感度は少なくとも90%である。特異度および感度は好ましくは、それぞれ、H&EおよびIHCの陰性リンパ節との比較に基づき少なくとも97%であり、H&EおよびIHCの陽性リンパ節との比較に基づき少なくとも85%である。
【0029】
所定のカットオフレベルは好ましくは、転移性黒色腫を有する組織では、良性メラニン形成細胞または正常組織に比べて、少なくとも2倍の過剰発現である。
【0030】
本発明の好ましい方法は、組織試料から核酸を抽出するための迅速な技術と、転移(metastasis)を示す核酸断片を増幅し検出する方法とを用いる。核酸断片は、マーカー遺伝子によってコードされたmRNAを、定性的かつ定量的に測定する。組織試料には、領域リンパ節と前哨リンパ節との両方、皮膚病巣、および、他の生体組織検査材料が包含される。
【0031】
本明細書で提供される方法によって、微小転移巣の術中検出が可能となり、医師は、更なるリンパ節を切除すべきか否か、また、適切な処置のプロトコルを直ちに実施すべきか否かを決定することが可能となる。表2に示されるように、リンパ節(LN)が黒色腫について陽性であることが分かれば、領域リンパ節は切除され、次いで、インターフェロン治療を提案することができるであろう。標準的な生体組織検査法は、1週間以上かかる場合があり、陽性結果であれば、領域リンパ節を除去するための追加の手術が必要であり、随伴的にインターフェロン治療が遅れる。
【0032】
【表2】

前記アッセイを行うために用いられる組織を十分にサンプリングすることが重要である。サンプリングには、組織試料の適切な切除および処理だけでなく、RNAの抽出も含まれる。組織試料が一旦入手されたら、存在するあらゆるガン細胞が検出されるように、該組織試料を適切に処理することが重要である。
【0033】
本発明の最も好ましい具体例において、リンパ節のサンプリングはまた、手術中でも、手術中以外においても注意が払われる。リンパ節におけるガン細胞の分布は均一ではないので、該リンパ節の複数の切片をサンプリングすることが好ましい。全ての前哨リンパ節(SLN)は、病理学的評価を行うために提出することが望ましい。前哨リンパ節材料は通常、ホルマリンで固定して、ホルマリン固定のパラフィン埋め込み(paraffin embedded)組織試料として試験する。前哨リンパ節の、同等に代表される部分は、分子解析(新鮮な組織)および組織学(固定された組織)のために処理する。一般的なリンパ節サンプリング手順は、コクラン(Cochran)等(2001)およびコクラン等(2004)に記述されている。病理学による同一リンパ節試料の試験と分子ベースの試験との両方を達成するための1つの方法は、最長の直径でリンパ節を二分することである。次いで、各々の半分は、少なくとも4個のフルフェイス切片(full-faced sections)に分割し、少なくとも1個の外側切片と内側切片とは固定材料として病理学試験に用い、また、少なくとも1個の外側切片と内側切片とは分子試験に用いる。リンパ節および他の組織における転移部および微小転移巣の分布は均一ではないので、転移部が見逃されないように、十分大きい試料を入手することが望ましい。本方法におけるこのサンプリング組織への1つのアプローチは、大きい組織試料を均質化し、その後、後続の分子試験で用いるために十分に混合された均質化試料を希釈することである。
【0034】
リンパ節組織の試料の場合、細胞の破砕を行なう前、全ての脂肪組織を除去することが好ましい。手動による、細胞および組織の破砕は、当該技術分野で知られているいかなる手段[例えば、米国特許第4,715,545号明細書に記述されている使い捨て組織粉砕器、または、使い捨てプローブを備えたオムニ(Omni)GLH115(バージニア州ウォレントン(Warrenton)、オムニ・インターナショナル社(Omni International))のような市販のホモジナイザー(homogenizer)]によっても行うことができる。均質化時間は、1〜2分以内であり、より好ましくは30〜45秒である。次いで、試料は、マーカーの発現レベルを分析して測定する前、RNAを精製するために処理することができる。適切なRNA精製方法は、カラム[例えば、カリフォルニア州バレンシア(Valencia)、キアゲン社(QIAGEN Inc.)、アールニアシー・ミニ・カラム(Rneasy mini column)、キア・シュレッダー(QIA shredder)、または、適切な代用品]を含む。
【0035】
組織試料から核酸を抽出するためには、様々な技術を利用することができる。典型的な市販の核酸抽出用キットは、核酸を抽出するのに少なくとも15分かかる。本発明の好ましい術中方法において、核酸は、8分未満、好ましくは6分未満で抽出される。
【0036】
無傷のRNAを成功裏に分離する方法は、4つの段階:細胞または組織を効果的に破砕する段階、核タンパク質複合体を変性する段階、内因性リボヌクレアーゼ(endogenous ribonuclease)(RNase)を不活性化する段階、および、汚染しているDNAとタンパク質とを除去する段階を含む。細胞抽出物中に存在するリボヌクレアーゼを不活性化するβ−メルカプトエタノール(β−me)とイソチオシアン酸グアニジニウム(guanidinium isothiocyanate)(GITC)との破砕特性および保護特性によって、それらの物質は第1の段階のための好ましい試薬となる。それらの試薬をドデシル硫酸ナトリウム(SDS)等の界面活性剤と合わせて使用した場合、核タンパク質複合体の破砕が達成され、それによって、該RNAが溶液中に放出され、タンパク質から分離されることが可能となる。組織は、GITC含有リシスバッファー(lysis buffer)中で均質化され、エタノールを添加することによって、RNAがシリカ膜に結合する適切な状態が創り出される。遠心分離によって、沈降したタンパク質と細胞のDNAとの溶解物を清澄化することができ、または、該遠心分離は、カラムによって実施することが好ましい。RNAの精製は、シリカまたは他の物質を含有するスピンカラム(spin column)で行うことが好ましい。
【0037】
RNAは、上述のスピンカラムによって沈降し、また、遠心分離時間は、30秒以下であることが好ましい。試料は典型的には、等量の70%エタノールで希釈し、次いで、該カラムに注ぐ前、完全に混合する。該カラムは、洗浄した後、遠心分離で乾燥させ、次いで、RNAは、リボヌクレアーゼ(RNase)非含有水の中に溶出させて、遠心分離によって回収する。この迅速なプロトコルの全時間は、8分未満であり、好ましくは6分未満である。
【0038】
要約すれば、前記の迅速なRNA抽出法は、次の諸段階:
組織試料を得る段階と、
前記組織を均質化して、ホモジネートを生成する段階と、
RNA結合性物質を含有する基質(substrate)、または、RNA結合物質が固定される基質に前記ホモジネートを接触させる段階と、
RNAを、前記RNA結合性物質に結合させる段階と、
あらゆる汚染物質、干渉物質および非結合RNAを除去するのに十分な条件の下、前記前記基質を洗浄する段階と、
前記基質から結合RNAを溶出する段階と、
を含む。
【0039】
この迅速な抽出法に関連する試薬は、製造業者によって提供される試薬である場合があり、例えば、
リシス/結合性バッファー(Lysis/Binding buffer)(好ましくは、4.5Mイソチオシアン酸グアニジニウム(GITC)、100mM NaPO4)、
ウォッシュバッファー(Wash buffer)I(好ましくは、5M GITCに入っている37%エタノール、20mMトリス−HCl)、
ウォッシュバッファーII(好ましくは、20mM NaClに入っている80%エタノール、20mMトリス−HCl)、および
溶出用の、ヌクレアーゼ(nuclease)非含有の無菌2回蒸留水(sterile double distilled water)、
である場合がある。
【0040】
1つの方法において、上述の、核酸を分離するための過程を行う前、組織試料は、秤量して、8mlまたは14mlのポリプロピレン培養試験管の中に入れ、次いで、ドライアイスで予備冷却する。次いで、凍結した組織試料は、解凍しないで約50mg以下の複数の断片に分割する。バッファーは全て、アールニアシー・ミニ・キット(Rneasy mini kit)において、キアゲン社(QIAGEN)によって提供されるものである。表3に基づき、多量のホモゲナイゼーション(homogenization:均質化)(リシス)バッファーを、該組織に添加する。
【0041】
【表3】

* 550mgを超える組織を、複数の等量部分に分割して、個々の試料として処理する。100mgを超える組織のためのリシスバッファー(lysis buffer)の容量を計算するための別法は、組織50mg当り1mlを添加し、100mg未満の組織には2mlを使用することである。
【0042】
前記組織試料は、次いで、例えば、グレード6にパワー設定されたオムニ(Omni)GLH115、アダプター(Adaptor)A100、および、使い捨てプローブによって均質化する。ホモジネートは、次いで、等量の70%エタノールと混合し、次いで、例えば、スピード10(最大)、約10秒に設定されたVWRモデルG560で渦巻きを起こすことによるか、または、ピペットで4〜5回移すことによって、完全に混合する。ホモジネート/エタノールの混合物は、次いで、表4に基づく容量で、真空マニホールド(vacuum manifold)に搭載されたRneasyミニカラム(mini column)に注がれる。その結果、安定した量(約5mg/カラム)の元の組織が負荷され、このようにして、各々の組織試料について同等のRNA収率が得られる。
【0043】
【表4】

次いで、前記カラムを真空にして、前記液体を除去する。真空を停止して、700mlで2回洗浄を行う。最初はRWIバッファーを用い、2回目はRPEバッファーを用い、それぞれ、濾過によって除去する。真空は、各々の場合、800〜1200ミリバールである。該カラムは、次いで、1.5mlの回収チューブ(collection tube)の中に入れ、次いで、エッペンドルフ型(Eppendorf)5415D遠心分離機を用い13,200rpmで30秒間遠心分離を行って乾燥させる。該カラムは、新たな1.5mL回収チューブに移す。その膜に、50μlのリボヌクレアーゼ(RNase)非含有水を直接添加し、次いで、該カラムは、エッペンドルフ型5415D遠心分離機を用い13,200rpmで30秒間遠心分離を行って、RNAを溶出させる。該RNAの品質は、アギレント・バイオアナライザー(Agilent Bioanalyzer)で決定し、また、該RNAは、−70℃で保管する。
【0044】
メラニンは、逆転写反応および増幅反応の効率に負の影響を与えることがある。したがって、試料が、かなりの量のメラニンを含有している疑いを受けている場合(例えば、初期の黒色腫または良性の皮膚母斑の試料の場合)、メラニンを除去する過程を試み、また、前哨リンパ節のアッセイを行う場合はメラニン形成細胞の含有量が低いので、それほど問題ではない。必要に応じて、メラニンを除去して、逆転写および/または核酸の増幅を高める。
【0045】
メラニンは典型的には、上述の濾過段階の間に除去される。高濃度のメラニンを含有する組織の場合、より少ない組織[キアゲン社のアールニアシー・ミニ・カラム(Rneasy mini column)1個当り約5mg]を使用することが望ましい。
【0046】
試料中に残留メラニンが生じる結果となるもう1つの方法を使用する場合、除去段階には、ポリマービード系(polymer beads system)[例えば、バイオゲル(Bio-Gel)P−60(カリフォルニア州ハーキュリーズ(Hercules)、バイオ・ラッドラボトリーズ(Bio-Rad Labotories))]を利用するマトリックスを使用することが含まれる。そのような方法は、サチアムーアシー(Satyamoorthy)等(2002)によって記述されている。この方法は本質的に、10mM酢酸ナトリウム(pH4.2)に入れたバイオゲル(Bio-Gel)材料の50%(w/v)混合物を調製する段階を含む。該混合物の約300μLをマイクロ遠心分離チューブに入れて、1000rpmで1分間遠心分離を行う。上澄み液は捨てて、該ビードは、ミニ・カラムまたは類似の容器に入れる。次いで、(先ず、それらを該容器中で低温放置した後)該ビードを含有する該容器にホモジネートを通過させる。上澄み液を回収する。十分なアッセイ容量のために必要ならば、10mM酢酸ナトリウムの追加の100μLアリコートで該ビードを更に洗浄する段階を使用して、メラニン非含有試料の追加容量を得ることができる。黒いメラニンは、該容器に保持されている該ビードの上に明確に現われるであろう。メラニン色素を除去するためには、ワン(Wang)等(2001)が記述するように、シリカベースフィルターをも使用することができる。
【0047】
本発明の術中方法の重要な面は、迅速なマーカー検出である。そのような方法が術中アッセイのために容認される時間内(即ち、約35分以下)で行うことができるという条件で、高感度で信頼できる特異的ないかなる方法をも使用することができる。
【0048】
mRNAレベルを測定して遺伝子発現を決定する場合、アッセイは、当該技術分野で知られているいかなる手段によっても行うことができ、また、アッセイには、PCR法、ローリングサークル増幅(Rolling Circle Amplification)(PCA)法、リガーゼ連鎖反応(Ligase Chain Reaction)(LCR)法、ストランド・ディスプレイスメント増幅(Strand Displacement Amplification)(SDA)法、核酸配列ベース増幅(Nucleic Acid Sequence Amplification)(NASBA)法およびその他の方法のような方法が包含される。包含される迅速な分子診断法は最も好ましくは、定量的なPCR法であり、QRT−PCR法が包含される。検出段階は、当該技術分野で知られているいかなる手段によっても行うことができ、マイクロアレイ法、遺伝子チップ法および蛍光法を包含する。
【0049】
典型的なPCRには、標的核酸種を選択的に増幅する複数の増幅段階またはサイクルが含まれる。典型的なPCRには、3つの段階:標的核酸が変性される変性段階と、一連のPCRプライマー(フォワード型(forward)プライマーおよびバックワード型(backward)プライマー)がDNAストランドへアニールするアニーリング段階と、耐熱性DNAがプライマーを延伸する延伸段階とが含まれる。この段階を複数回繰り返すことによって、DNA断片は増幅されて、標的DNA配列に対応するアンプリコン(amplicon)が生じる。典型的なPCRには、変性段階、20サイクル以上のアニーリング段階および延伸段階が含まれる。アニーリング段階および延伸段階はしばしば、同時に実施されることがあり、その場合のサイクルは、2つの段階のみを含む。
【0050】
本発明の好ましい方法において、RT−PCR増幅反応は、RT−PCRを利用しながら、術中診断を行うのに適した時に行い、これらの段階の各々の長さは、数分の範囲ではなく数秒の範囲である場合がある。具体的には、少なくとも約5℃/秒のサーマルランプ速度(thermal ramp rate)を生じさせることのできる幾つかの新しいサーマルサイクラー(thermal cyclers)で、30分以下のRT−PCR増幅が使用される。増幅は、25分未満で行うことがより好ましい。このことを考慮して、PCRサイクルの各々の段階のために与えられる後続のタイムは、ランプタイム(ramp times)を含まない。変性段階は、10秒以下の間行うことができる。実際、幾つかのサーマルサイクラーは、変性段階の最適所要時間となり得る「0秒」間のセッティング(settings)を有する。即ち、サーマルサイクラーは、十分に変性温度を達成させる。アニーリング段階および延伸段階は、それぞれ10秒未満であることが最も好ましく、また、アニーリング/延伸段階の組合せは、同一温度で行われる場合、10秒未満となることがある。幾つかの均質なプローブ検出方法は、迅速なアッセイ性能を最大にするために、延伸を行うための別個の段階を必要とすることがある。非特異的な副反応の形成と全増幅時間との両方を最小限に抑えるために、アニーリング温度は典型的には、50℃より高い。アニーリング温度は、55℃より高いことがより好ましい。
【0051】
実験者の介入がない、RT−PCRの単一複合反応(single combined reaction)は、幾つかの理由、即ち、(1)実験者が誤る危険性が減少すること、(2)標的または生成物が汚染する危険性が減少すること、および、(3)アッセイ速度が増大すること、により望ましい。該反応は、1種類または2種類のポリメラーゼから成ることがある。2種類のポリメラーゼの場合、これらの酵素の一方は典型的には、RNAベースのDNAポリメラーゼ(逆転写酵素(reverse transcriptase))であり、また、他方は、耐熱性のDNAベースのDNAポリメラーゼである。アッセイ性能を最大にするためには、これらの酵素機能の両方のための「ホットスタート(hot start)」技術の形態を利用することが好ましい。米国特許第5,411,876号および同第5,985,619号明細書は、様々な「ホットスタート」アプローチの例を提供する。好ましい方法には、効果的なDNA重合のために必要な諸成分の1種以上を封鎖する1種以上の熱活性化法(thermoactivation methods)を使用する段階が包含される。米国特許第5,550,044号および同第5,413,924号明細書には、そのような方法において使用するための試薬を調製するための方法が記述されている。米国特許第6,403,341号明細書には、PCR試薬の諸成分の1つの化学的変性(chemical alteration)を含む封鎖アプローチが記述されている。最も好ましい具体例において、RNA依存性ポリメラーゼの活性とDNA依存性ポリメラーゼの活性との両方は、単一酵素中に存在する。効率的な増幅を行うために必要とされる他の成分には、ヌクレオシドトリホスフェート(nucleoside triphosphates)、二価塩、および、バッファー成分が包含される。ある場合に、非特異性核酸および酵素安定剤は有効である。
【0052】
好ましいRT−PCRにおいて、幾つかのサーマルサイクラーのより速いランプタイムを利用するために、PCR成分および幾種類かの逆転写酵素の量は変則的である。具体的には、プライマーの濃度は非常に高い。
【0053】
逆転写酵素反応のための、典型的な遺伝子特異性プライマーの濃度は、約20nM未満である。迅速な逆転写酵素反応を約1〜2分程度で達成するために、該逆転写酵素のプライマー濃度は、20nMを超えるまで、好ましくは少なくとも約50nMまで、典型的には約100nMまで上昇させる。標準的なPCRのプライマー濃度は、100nM〜300nMの範囲である。Tmの変動を補正するために、より高い濃度を標準的なPCRで使用することができる。しかし、ここにおける目的のための前記プライマー濃度は、Tmの補正が全く必要でない状況のためのものである。Tmの補正が必要であるか、または望ましい場合、比例的にいっそう高いプライマー濃度を経験的に決定し使用することができる。迅速なPCRを達成するために、PCRのプライマー濃度は典型的には、250nMより高く、好ましくは約300nMより高く、典型的には約500nMである。
【0054】
商業的に使用される診断装置もまた、陰性の結果の場合の特定の増幅反応の作動を確認する、1つ以上の、内部のボジティブコントロール(internal positive control)を利用することが好ましい。RT−PCRにおいて確認されなければならない偽陰性結果の潜在的原因には、不十分なRNA量、RNAの分解、RTおよび/またはPCRの抑制、ならびに、実験者の誤りが包含される。
【0055】
タンパク質レベルを測定して遺伝子発現を決定する場合、十分な特異度と感度とが得られるという条件で、当該技術分野で知られているいかなる方法も適切である。例えば、タンパク質レベルは、該タンパク質に特異な抗体または抗体断片に結合させ、次いで、抗体結合タンパク質の量を測定することによって測定することができる。抗体は、検出を容易にするための、放射性試薬、蛍光試薬または他の検出可能試薬によって標識化することができる。検出方法は、酵素結合免疫吸着測定法(enzyme-linked immunosorbent assay)(ELISA)および免疫ブロット(immunoblot)技術を包含するが、それらに限定されない。
【0056】
本発明は、組織試料中の悪性メラニン形成細胞を同定するのに十分な特異度と感度とを提供する。その方法は、マーカーによってコードされたmRNAを測定することによって、とりわけマーカー遺伝子の発現を決定する。本発明の好ましいマーカーは、悪性メラニン形成細胞を有する組織では、良性メラニン形成細胞または正常組織と比べて、少なくとも2倍の過剰発現を示す。本明細書に開示される結果によると、第1のマーカーは臨床的に関連のある情報を提供するには不十分であるものの、1種以上の第2のマーカーと組み合わせたときに得られる情報は、臨床医が現在信頼している、ヘマトキシリン・エオジン染色(H&E)および免疫組織化学(IHC)の「ゴールド基準(gold standard:最も基準になる検査)」に匹敵するということが分かる。第3のマーカーおよび対照遺伝子(control genes)は、第1のマーカーおよび第2のマーカーを補強して、特異性および/または感度を更に増大させることができる。
【0057】
次の諸実施例に記述されるように、それらのマーカーは、図1に示されるプロトコルによって同定した。このように、本発明は、図1のプロトコルと、本明細書に開示される諸実施例とに従うことによって、黒色腫特異のマーカーを同定するための方法を提供する。
【0058】
第1のマーカーは、PLABである場合があり、本明細書では、配列ID番号:1を包含する、いずれかの変異株(variant)、対立遺伝子、等をコードする遺伝子として規定される。PLABはまた、パラルカー(Paralkar)等(1998)によって記述されており、また、受入番号AF003934で表わされる。PLABは、前立腺ガン[リュー(Liu)等(2003)、カラン(Karan)等(2003)およびナカムラ(Nakamura)等(2003);米国特許第5,994,102号、同第6,107,476号、同第6,465,181号、同第6,500,638号、同第6,521,227号明細書;米国特許公開第2002/0048784号、同第2003/0013097号および同第2003/0059431号明細書]ならびに結腸直腸ガン[ブラウン(Brown)等(2003)、バックホールツ(Buckhaults)等(2001)および米国特許公開第2002/0160382号]の病因論と関係がある。
【0059】
第2のマーカーは、L1CAMであり、本明細書では、配列ID番号:2を包含する、いずれかの変異株(variant)、対立遺伝子、等をコードする遺伝子として規定される。L1CAMはまた、ハスペル(Haspel)等(2003)、ならびに、米国特許第5,872,225号および同第5,969,124号明細書に記述されており、また、受入番号NM_000425で表わされる。
【0060】
本発明は、幾つかの機能的カテゴリー(functional categories)に分類される第3のマーカーを更に規定する。このように、これらの機能的カテゴリーの中に見出だされる追加的なマーカーを使用することができる。実施例においていっそう詳細に記述されるように、黒色腫特異の発現上昇した(up-regulated)遺伝子は、神経組織の成長と細胞周期制御(cell cycle control)との機能的カテゴリーに分類され、また、黒色腫特異の発現低下した(down-regulated)遺伝子は、組織の成長と細胞分化との機能的カテゴリーに分類される。
【0061】
第3のマーカーには、配列ID番号:3,29〜978および999が包含される。表5に多数の第3のマーカーを記述し、また、表15に全てをまとめる。
【0062】
NTRK3は、シュトラウスベルク(Strausberg)等(2002)、マーケッティ(Marchetti)等(2003)、ヒサオカ(Hisaoka)等(2002)、マグレガー(McGregor)等(1999)、ライデン(Ryden)等(1996);米国特許第5,348,856号、同第5,844,092号、同第5,910,574号明細書;ならびに、米国特許公開第2002/0155480号および同第2003/014283号明細書に記述されており、受入番号BC013693またはS76476.1によって表わされる。NTRK3は、プライマー/プローブのセットの配列ID番号:16〜18によって認識されるmRNAをコードする遺伝子としても規定される。
【0063】
チロシナーゼ(tyrosinase)は、マンデルコーン−モンソン(Mandelcorn-Monson)等(2003)および米国特許第6,153,388号明細書によって記述されており、受入番号(Accession No.)NM_000372で表わされる。チロシナーゼはまた、プライマー/プローブのセットの配列ID番号:19〜21で認識されるmRNAをコードする遺伝子として規定される。
【0064】
【表5−1】

【表5−2】

【0065】
【表5−3】

第3のマーカーは、結果として得られるアッセイが十分な感度と特異度とを有するという条件で、第1のマーカーもしくは第2のマーカーと置き換えること、および/または、第1のマーカーもしくは第2のマーカーを補足することができる。
【0066】
任意のあらゆる増幅ベースの分子診断装置の特異度は、排他的ではないが大幅に、プライマーセットの素性(identity)に依存する。プライマーセットは、フォワード(forward)オリゴヌクレオチドプライマーとリバース(reverse)オリゴヌクレオチドプライマーとの対であって、標的DNAにアニールして標的配列の増幅を可能にし、そうすることによって、標的配列特異のアンプリコン(amplicon)を生成する該対である。それらのプライマーは、関心ある疾患状態のマーカーを増幅することができなければならない。本発明の場合、これらのマーカーは、黒色腫に向けられる。
【0067】
前記反応はまた、特異的シグナル(specific signal)を検出する幾つかの手段を含んでいなければならない。このことは、関心ある標的配列の重合によって誘導されるDNA配列の領域を検出する試薬を用いることにより成し遂げることが好ましい。検出するのに好ましい試薬は、関心ある特異的な核酸配列に結合されるとき、特異な測定可能シグナルを提供する。これらの方法はしばしば、関心ある該配列に結合されるとき、蛍光を増大させる核酸プローブを伴う。本発明の方法に係る諸反応の進捗は、各々のPCRプライマーセットのためのアンプリコンの生成の相対速度を解析することによって監視する。
【0068】
本発明は、特許請求される方法において、プライマー/プローブのセットとそれらの使用法とを更に含む。それらの配列は、

である。
【0069】
アンプリコンの生成を監視する段階は、多数の試薬および方法によって達成することができる。それらの試薬および方法は、蛍光プライマー(fluorescent primers)および蛍光プローブ(fluorogenic probes)、ならびに、二重鎖DNAに結合する蛍光色素を伴うが、それらに限定されない。分子ビーコン(Molecular beacons)、スコーピオンズ(Scorpions)、および、他の検出スキームモ使用することができる。PCRを監視する一般的方法は、蛍光加水分解プローブアッセイ(fluorescent hydrolysis probe assay)を利用する。この方法は、幾つかの耐熱性DNAポリメラーゼ(例えば、TaqまたはTfl DNAポリメラーゼ)の5'−ヌクレアーゼ活性を利用して、PCR過程の間、オリゴマープローブを切断する。
【0070】
本発明は、本発明の方法で使用されるPCR法によって得られる複数のアンプリコンを更に提供する。これらのアンプリコンには、次のものが包含される。

【0071】
前記オリゴマーは、延伸条件の下、増幅された標的配列にアニールするように選定する。前記プローブは典型的には、それの5'末端に蛍光レポーター(fluorescent reporter)を有し、それの3'末端に該レポーターの蛍光クエンチャー(fluorescent quencher)を有する。該オリゴマーが無傷である限り、該レポーターからの蛍光シグナルは抑制される。しかし、該オリゴマーが延伸過程の間に消化される時、該蛍光レポーターはもはや該クエンチャーに接近していない。任意のアンプリコンのための遊離した蛍光レポーターの相対的蓄積(relative accumulation)は、対照試料のための同一アンプリコンの蓄積、および/または、対照遺伝子の蓄積に匹敵することがある。該対照遺伝子は、例えば、RNA集団中の任意のRNAの任意のcDNAの生成物の相対存在比(relative abundance)を決定するためのβアクチン(β-Actin)またはPBGDを包含するが、それらに限定されない。蛍光加水分解プローブアッセイのための生成物および試薬は、例えばアプライド・バイオシステムズ(Applied Biosystems)から、商業的に容易に入手することができる。
【0072】
適切な検出試薬は、通常、「スコーピオンズ(Scorpions)」と呼ばれ、米国特許第6,326,145号および同第5,525,494号明細書に記述されている。これらの試薬は、テイルドプライマー(tailed primer)と集積シグナリング系(integrated signaling system)とを有する1種以上の分子を含有する。前記プライマーは、テンプレート結合性領域(template binding region)と、リンカーおよび標的結合性領域(target binding region)を有するテイル(tail)とを含有する。テイル中の標的結合性領域は、該プライマーのエクステンション生成物(extension product)の相補的な配列にハイブリダイズする(hybridizes)。この標的特異性のハイブリダイゼーションの結果は、ハイブリダイゼーションが検出可能な変化を受けるシグナリング系に連結される。PCRにおいて、標的結合性領域およびテイル領域は好都合にも、該テイル領域が単鎖のまま(即ち、複写されないまま)であるような具合に、配列する。このように、該テイル領域は、PCR増幅生成物中では増幅不可能である。該リンカーは、プライマーテンプレート上の、ポリメラーゼ関与の鎖延長部分(polymerase mediated chain extension)を保護するブロッキング部分(blocking moiety)を含有する。
【0073】
最も好ましい検出試薬は、TaqMan(登録商標)プローブ[ニュージャージー州ブランチブルグ(Branchburg)、ロッシュ・ダイアグノスチックス(Roche Diagnostics)]であり、それらは、米国特許第5,210,015号、同第5,487,972号および同第5,804,375号明細書に記述されている。これらのプローブは本質的に、PCRにおいて使用されるポリメラーゼの5'−3'エクソヌクレアーゼ活性(exonuclease activity)によってプローブ上で蛍光クエンチャー(fluor-quencher)の組合せが分離されることによる核酸検出を伴う。それらのマーカーまたは対照のいずれに対しても、適切な蛍光化合物であればいかなるものも使用することができる。そのような蛍光化合物は、Texas Red、Cal Red、Fam、Cy3およびCy5を包含するが、それらに限定されない。1つの具体例において、次の蛍光化合物は、注目される前記マーカーに対応する。PLAB:Fam、LiCAM:Texas Red、または、Cal Red、チロシナーゼ:C1、PBGD:Cy5。
【0074】
PCRおよびQRT−PCRにおいてアンプリコンの蓄積を制御し監視するための装置ならびにソフトウェアも、容易に入手することができる。それらの装置およびソフトウェアには、カリフォルニア州サニーベール(Sunnyvale)、セファイド社(Cepheid)から市販されているスマート・サイクラー・サーモサイクラー(Smart Cycler thermocycler)と、アプライド・バイオシステムズ社(Applied Biosystems)から市販されているABI Prism7700配列検出装置(Sequence Detection System)が包含される。
【0075】
遺伝子発現アッセイを行う場合、関心ある組織に構成的に発現される遺伝子を使用することが好ましい。PBGDは通常、幾つかの因子に起因して内部対照(internal control)として使用される。PBGDは、ヒトにおける未知の偽遺伝子を含有しておらず、PBGDは、ヒト組織に構成的に発現し、また、PBGDは、比較的低いレベルで発現し、したがって、関心ある標的配列の増幅を抑制するとは思えない。PBGDを対照として使用すれば、偽陰性結果のあらゆる潜在的源(potential sources)に起因する誤った報告結果が最小限に抑えられるか、または排除される。
【0076】
前述のQRT−PCRを行うための方法を商業化する場合、特定の核酸を検出するための幾つかのキットは、とりわけ有用である。1つの具体例において、該キットは、複数のマーカーを増幅して検出するための複数種の試薬を有する。該キットは任意的に、リンパ節の組織から核酸を抽出するための、試料前処理用試薬および/または物品(例えば、チューブ)を備えている。該キットは、試料が汚染する危険性を最小限に抑えるための物品(例えば、リンパ節の切開および前処理のための、使い捨ての外科用メスおよび表層)を更に備えることができる。
【0077】
好ましいキットには、上述のワンチューブ(one-tube)QRT−PCR過程のために必要な試薬、例えば、逆転写酵素、逆転写酵素プライマー、対応するPCRプライマーセット(好ましくは、マーカーおよび対象のためのもの)、耐熱性DNAポリメラーゼ(例えば、Taqポリメラーゼ)、ならびに、1種以上の適切な試薬が入っている。前記の適切な試薬は、例えば、スコーピオンプローブ(scorpion probe)、蛍光加水分解プローブアッセイ(fluorescent hydrolysis probe assay)のためのプローブ、分子ビーコンプローブ(molecular beacon probe)、二重鎖DNAに特異な蛍光色素または単一色素プライマー(例えば、臭化エチジウム(ethidium bromide))を包含するが、それらに限定されない。それらのプライマーは、上述の高濃度を生じる量であることが好ましい。耐熱性DNAポリメラーゼは通常、様々な製造業者から商業的に入手することができる。キットの追加的材料には、適切な反応用チューブもしくはガラスビン、任意的にマグネシウムを含有するバリヤー組成物(典型的には、ワックスビード(wax bead));必要なバッファーおよび試薬(例えば、dNTPs)を包含する、逆転写酵素もしくはPCR段階のための反応混合物(典型的には10X);ヌクレアーゼ非含有水もしくはRNase(リボヌクレアーゼ)非含有水;RNase抑制剤;1種以上の対照核酸;ならびに/または、QRT−PCRのPCR段階および/もしくは逆転写酵素の中で使用することのできる、追加的なあらゆるバッファー、化合物、補因子(co-factors)、イオン成分、タンパク質および酵素、ポリマー、等、が入っていることがある。キットには任意的に、核酸抽出用試薬および材料が入っている。キットには、取扱説明書も入っていることが好ましい。
【0078】
次の諸実施例は、特許請求の範囲に記載される発明を説明するために提供されるが、該発明を限定するものではない。本明細書で引用される参考文献は全て、言及されることによって本明細書に組み入れられる。
【0079】
実施例1
組織の前処理
凍結した新鮮な悪性黒色腫試料、良性皮膚母斑試料、正常皮膚試料、黒色腫のリンパ節転移部試料および黒色腫非含有リンパ節試料を、ゲノミクス・コラボラティブ社(Genomics Collaborative, Inc.)[マサチューセッツ州ケンブリッジ(Cambridge)]、アステランド(Asterand)[ミシガン州デトロイト(Detroit)]、クリノミクス(Clinomics)[マサチューセッツ州ピッツフィールド(Pittsfield)]およびプロテオジェネックス(Proteogenex)[カリフォルニア州ロサンゼルス]、アーデイス(Ardais)[マサチューセッツ州レキシントン(Lexington)]およびインパス(Impath)[マサチューセッツ州ウェストバラ(Westborough)]から入手した。全ての組織供給元は、本研究で使用される組織試料が、治験審査委員会(Institutional Review Board)の認可する、対応する病院のプロトコルと生命倫理の原則とにしたがって採取されたことを宣言した。患者の人口統計学と病理学との情報も収集した。診断を確実にし、かつ、試料の保存と腫瘍の含有量とを評価するために、各々の試料の病理組織学的特徴を吟味した。
【0080】
マイクロアレイ解析のために選定された黒色腫の一次組織と良性母斑の一次組織とは、50%を超えるメラニン形成細胞含有率を有し、組織構造は混合されなかった。悪性黒色腫の患者から黒色腫陽性のリンパ節を採取した。その際、黒色腫の診断は、IHC(免疫組織化学検査)(S100およびHMB45)と組合せたH&E(ヘマトキシリン・エオジン染色)によって確認した。黒色腫非含有リンパ節は、患者の病歴において黒色腫を有さなかった該患者から得、また、黒色腫が存在しないことは、S100およびHMB45のための抗体を用いるIHCおよびH&Eによって確認した。
【0081】
合計70個の一次組織試料由来のRNAを使用して、遺伝子発現のプロフィールを解析し、黒色腫特異の遺伝子を同定した。試料には、45個の一次悪性黒色腫と、18個の良性皮膚母斑と、7個の正常皮膚組織とが入っていた。本研究対象に含まれる初期の黒色腫の大部分は、疾患の初期を示し、4mm未満の厚さを有している。このことは、標準的な黒色腫患者の母集団と一致している[エイトケン(Aitken)等(2004)]。患者の人口統計的特性、臨床的特性および病理学特性は、表6に示され、表7にまとめられる。
【0082】
加えて、77個の悪性黒色腫のリンパ節転移部の試料と、18個の黒色腫非含有リンパ節組織の試料とを使用して、定量的なワンステップPCRアッセイを行った。黒色腫陽性リンパ節は、類上皮細胞および紡錘細胞の初期の黒色腫から得られた転移部を有する、腋窩リンパ節、頚部リンパ節および鼠径リンパ節を有した。18個の黒色腫非含有リンパ節のうち10個は、他のガン患者から採取したものの、これらのリンパ節の中には病理学者によってガン細胞が全く見出されず、また、8個のリンパ節は、非悪性病巣から採取された。
【0083】
【表6−1】

【表6−2】

【0084】
【表7】

【0085】
実施例2
悪性黒色腫試料および良性皮膚母斑試料由来のRNAの分離
キアゲン(Qiagen)RNeasy(登録商標)ミニ・キット(Mini Kit)[カリフォルニア州バレンシア(Valencia)、キアゲン社(QIAGEN Inc.)]を使用し、また、RNA試料中の残留メラニンを最小限に抑えるために、プロトコルを一部変更した。メラニン形成細胞を含有する組織については、各々の患者から得られた4個の反復試験用組織試料であって、それぞれ約5mgの重量である該組織試料を使用し、別々に処理した。組織試料は、機械的ホモジナイザー[Ulta Turrex T8、ドイツ国、シュタウフェン(Staufen)、IKA−ベルケ社(Werke)]によって、10μlのβ−メルカプトエタノール[ミズーリ州セントルイス(St. Louis)、シグマ・ケミカル社(Sigma Chemical Co.)]を含有する1.0mlのRLTバッファー(キアゲン社)で均質化した。均質化を行った後、諸試料は、キアゲン(Qiagen)RNeasy(登録商標)カラムに装填し、次いで、遠心分離を行った。フロースルー(flow-through)を捨てた後、RW1バッファー700mlを添加し、該カラムは、室温に5分間保持し、次いで、遠心分離を行った。この段階は、3回繰り返した。次いで、標準キアゲン(QIAGEN)RNeasy(登録商標)ミニ・キット(Mini Kit)プロトコルに従った。シリカゲルの膜からRNAを取り除くため、ツーステップ(two-step)溶出を行った。同一の個々の患者の組織から得られた全RNAは、貯留して、更なる分析に使用した。
【0086】
メラニン形成細胞をかなりの割合では含有していない組織からRNAを分離するために、標準トリゾール(Trizol)プロトコルを使用した。組織は、トリゾール試薬[カリフォルニア州カールズバッド(Carlsbad)、インビトロゲン社(Invitrogen)]で均質化した。遠心分離を行った後、上部の液相は回収し、次いで、全RNAは、イソプロピルアルコールを用い−20℃で沈降させた。RNAのペレットは、75%エタノールデ洗浄し、水で溶解し、使用されるまで−80℃で保管した。RNA品質は、アジレント(Agilent)2100バイオアナライザー(Bioanalyzer)RNA600ナノ(Nano)アッセイ[カリフォルニア州パロアルト(Palo Alto)、アジレント・テクノロジーズ(Agilent Technologies)]を用いて調べた。
【0087】
標準製造者のプロトコル(standard manufacturer protocol)に従い、22,000個のプローブセットを有する高密度オリゴヌクレオチド・アレイHu133A遺伝子チップ(Gene Chip)[カリフォルニア州サンタクララ(Santa Clara)、アフィメトリクス社(Affymetrix)]を用いて、標識cRNAを前処理し、ハイブリダイズさせた。アフィメトリクス社のプロトコルとスキャナーとを使用して、アレイを走査した。後続の分析を行うために、各々のプローブセットは、別個の遺伝子(separate gene)と見なした。各々の遺伝子の発現値は、アフィメトリクス遺伝子チップ(Affymetrix Gene Chip)解析用ソフトウェアMAS5.0を用いて算出した。全てのチップは、3つの品質管理基準を満たした。「プレゼント(present)」コール(call)は35%を超え;スケールファクター(scale factor)は、600の目標強度まで測定したとき、12未満であり、バックグランドレベル(background level)は150未満であった。皮膚細胞からRNAを分離することは困難である[ヒッペル(Hipfel)等(1998)]ので、「プレゼント(present)」コールの通常の割合よりも小さいカットオフ(cut-off)を選択し、結果として、より低い全遺伝子発現レベルが得られた。
【0088】
実施例3
データ解析
遺伝子発現のデータは、フィルターにかけて、2個以上の試料の中に「プレゼント(present)」と呼ばれる遺伝子のみを有するようにした。このフィルターは、それらの試料中の発現を変化させなかった遺伝子を除去するために使用した。前記アレイ上に存在した22,000個の遺伝子のうち15,795個は、このフィルターを通過し、階層的クラスタリング(hierarchical clustering)のために使用された。クラスタリングを行なう前、各々の遺伝子発現シグナルは、データセットにおける全試料の中央値の発現量(median expression)によって分割した。この正規化段階によって、遺伝子発現の大きさの影響は最小限に抑えられ、また、クラスタリング解析において類似の発現パターンを有する複数の遺伝子はグループ分けされた。GeneSpring6.1を使用して、遺伝子と試料との両者に、ピアソン相関係数(Pearson correlation)を用いた平均連結(average linkage)階層的クラスタリングを実施した。
【0089】
特異的に発現する遺伝子を同定するために、本発明者らは、黒色腫試料を、良性母斑試料および正常皮膚試料と別々に比較した。第1の解析は、45個の黒色腫試料と7個の正常皮膚試料とから成り;第2の解析は、45個の黒色腫試料と18個の母斑試料とから成った。これらの2つのデータセットは、図1に示される下記手順によって別々に解析した。遺伝子の選別には、マイクロアレイの有意差分析(significance analysis of microarray)[SAM;タッシャー(Tusher)等(2001)]とt検定とを用いた。SAMのパラメータは、1,000の組合せで、Δ=2.5およびフォールドチェンジ(fold change)=2.0と設定した。欠測値は存在せず、また、デフォルト乱数(default random number)を使用した。次いで、百分位数分析(percentile analysis)を行った。発現上昇した遺伝子について、黒色腫試料の30百分位数を、正常皮膚試料の最大値または母斑試料の最大値と比較した。前記の選別された遺伝子が、前記諸試料の2つのグループの間に有意な特異的発現を有していることを確実にするために、ボンフェローニ補正(Bonferroni correction)によるスチューデント(Student)t検定をも、カットオフp<0.05で行った。最終段階として、本発明者らは、黒色腫/良性遺伝子のリストと黒色腫/正常遺伝子のリストとの間の共通遺伝子を同定し、結果として、図1に示される黒色腫において、発現上昇した遺伝子の単一のリストが得られた。そのとき、439個の共通遺伝子は、表15−1〜表15−22に記述される通りの配列ID番号:29〜467に対応する。それらの結果は、表8−1〜表8−10に示す。
【0090】
【表8−1】

【表8−2】

【0091】
【表8−3】


【表8−4】

【0092】
【表8−5】

【表8−6】

【0093】
【表8−7】

【表8−8】

【0094】
【表8−9】

【表8−10】

【0095】
本発明者らは、黒色腫において、良性母斑試料と比べて少なくとも10倍の過剰発現を有する諸遺伝子の選抜候補リストを選定した。完全なアレイデータセット(array dataset)は、国立バイオテクノロジー情報センター/ジェンバンク・ジオデータベース(NCBI/Genbank GEO database)に提出された(シリーズ・エントリー・ペンディング(series entry pending))。
【0096】
階層的クラスタリングによって、4つの異なるクラスターが明らかとなった(図2)。2つのクラスターは、黒色腫試料の大部分(45個のうち43個)から成った;第3のクラスターは、良性母斑試料の大部分(18個のうち15個)を含み、また、第4のクラスターは、7個全ての正常皮膚試料を含んだ。黒色腫試料それら自体は、一方のクラスターは35個の試料を含み、他方のクラスターは10個の試料を含む、2つのクラスターを形成した。小さいクラスターを形成した試料は、類上皮(epithelioid)黒色腫のみを表わし、視覚的に、より少ないメラニンを含有し、かつ、PRAME遺伝子およびMIA遺伝子のより高い発現を例証した(p<0.05)。少ない段階IIIおよびIVの腫瘍は全て、小さいクラスターにグループ分けされた。大きいクラスターは、NTRK3およびネスチン(nestin)(NES)のより高い発現を示した(p<0.05)。黒色腫試料および良性母斑試料は全て、既知のメラニン形成細胞のマーカー(例えば、チロシナーゼおよびMART−1)の同等に高い発現を例証し、それによって、これらの試料中に類似のメラニン形成細胞含有量が存在することが確認された。本発明者らのデータによって、黒色腫試料、良性母斑試料および正常皮膚試料は異なる遺伝子発現プロフィールを有しており、しかも、分子ベースで類別し得るということが示される。表9に、黒色腫およびそれらの関連する機能性カテゴリーに高く発現した選別遺伝子をまとめる。
【0097】
【表9】

実施例4
黒色腫に特異的に発現した遺伝子の同定
70個の遺伝子発現プロフィールの全てを使用して解析した。黒色腫試料グループ、良性母斑試料グループおよび正常皮膚試料グループに対する「プレゼント・コール」の中央値%は、43.8%、46.9%および41.7%であった。60個のマイクロアレイ(86%)は、最小値の3倍以内の範囲のスケーリングファクター(scaling factors)を有した。3より大きいスケーリングファクターを有するチップは、試料のカテゴリー、黒色腫試料、良性母斑試料および正常皮膚試料の間で同等に分布した。
【0098】
非監視の、管理されていない(unsupervised)階層的クラスタリングの結果によって、黒色腫試料、良性母斑試料および正常皮膚試料の分離が異なることが明らかとなった(図2)。本発明者らは、黒色腫試料の大部分(45個のうち43個)から成る2つのクラスターと、7個全ての正常皮膚試料、3個の良性母斑試料および2個の黒色腫試料を含んだ第3のクラスターと、18個の良性母斑試料のうち14個を含んだ第4のクラスターとを有する4つのクラスターを観察した。それらの試料の源は、クラスタリングに影響を与えなかった。異なる源に由来する試料は、試料の種類(黒色腫、良性母斑および正常皮膚)に従って一緒にクラスターを成した。クラスタリングパターン(clustering patterns)の安定性を更に吟味するために、本発明者らは、クラスター分析を行う前、遺伝子のフィルタリング(filtering)に別のカットオフを用いた。具体的には、本発明者らは、黒色腫試料、良性母斑試料および正常皮膚試料の各々の中に少なくとも10%の「プレゼント(present)」コール(calls)を有する遺伝子を保持した。このカットオフによって、本発明者らは、15,306個の遺伝子を得て、階層的クラスタリングを繰り返した。患者試料のクラスターパターンは、前記2つの「プレゼント」コールからの15,795個からのものと同一であった。
【0099】
黒色腫試料とクラスターを成した単一の母斑試料は、黒色腫のインサイチュー・プレゼント(in-situ present)を全く有さない、変則的な(中程度の)母斑試料である。正常皮膚試料とクラスターを成した3個の母斑試料は全て、複合母斑(compound nevi)試料であり、それらのうち1個は、他の母斑試料に比べてより低い率のメラニン形成細胞含有量を有した。黒色腫試料それら自体は、2つのクラスターを形成し、大きい方のクラスターは34個の試料であり、小さい方のクラスターは9個の試料であった。小さい方のクラスターを形成した試料は、類上皮(epithelioid)黒色腫のみを示し、視覚的に、より少ないメラニンを含有した。本発明者らの研究で使用された、少ない段階IIIおよびIVの腫瘍は全て、小さい方のクラスターにグループ分けされた。大きい方のクラスターは、混合された組織構造の試料の、類上皮細胞、紡錘細胞および黒色腫から構成され、メラミンの存在はより著しかった。大きい方のクラスターには、段階Iおよび段階IIの試料のみが入った。
【0100】
黒色腫に関連し、はっきり識別することのできる遺伝子クラスターが見出だされた。これは、黒色腫試料における発現上昇した遺伝子(図2のA,B,C)と発現低下した遺伝子(図2のE)とによって特徴付けることができる。同時に、黒色腫試料および良性母斑試料は、既知のメラニン形成細胞マーカー(例えば、MART−1)の発現が高いことを例証し、そのことによって、これらの試料におけるメラニン形成細胞の含有量は同等であり、かつ、メラニン形成細胞特異のマーカーはそれらを識別することができないということが確認された。本発明者らのデータによって、黒色腫試料、良性母斑試料および正常皮膚試料は、はっきり識別することのできる遺伝子発現プロフィールを有しており、かつ、それらの分子ベースで類別することができるということが示される。
【0101】
悪性黒色腫において発現上昇した遺伝子を同定するために、本発明者らは、ボンフェローニ補正によるt検定と百分位数分析とを組合せてSAMを適用した(図1)。ボンフェローニ補正のt検定および百分位数分析は、それぞれ、複数の試験組織、および、前記の複数の腫瘍試料の異質性(heterogeneity)を検討するために使用した。これらの解析の結果として、439個の遺伝子を選定し、表15−1〜表15−22に配列ID番号:29〜467としてまとめる。本発明者らは、黒色腫において発現上昇した439個の遺伝子の中から、黒色腫試料における過剰発現が良性試料における発現の10倍を超える33個の遺伝子の選抜候補リスト(short list)を選定した。これら33個の遺伝子には、悪性黒色腫と関連のある既知の多くの遺伝子[例えば、NTRK3(スー(Xu)等(2003))、L1CAM(フォーゲル(Fogel)等(2003)およびティース(Thies)等(2002))、me20m(アデマ(Adema)等(1994))だけでなく新規な諸遺伝子]が包含される。表10に、黒色腫試料における過剰発現が10倍を超える遺伝子を示す。
【0102】
【表10】

本発明者らは、NTRK3、PLAB、L1CAMを包含する、黒色腫に過剰発現した3種の遺伝子を更に選定して、マイクロアレイの結果(図3)の定量的リアルタイムRT−PCRによる確認を行った。PLABは、新規な遺伝子であり、黒色腫におけるそれの特異的発現は、本発明者らが最良に認識する前には報告されていなかった。L1CAMおよびNTRK3の、黒色腫における特異的発現は、タンパク質レベルでのみ例証されていた[スー等(2003)、フォーゲル等(2003)およびティース等(2002)]。更に、本発明者らは、相補的な原理(complementary basis)に基づき、本発明者らの研究において良性組織/正常組織から黒色腫を類別するためには、PLABおよびL1CAMが最良の組合せであることを確認した。GP100は、黒色腫に特異なマーカーであることが知られており、正の対照(positive control)として選定した。前記RT−PCRアッセイを行うため、本発明者らは、14個の初期の黒色腫試料、7個の良性母斑試料および5個の正常皮膚試料であって、前記のマイクロアレイの研究のために使用した同一の組織から分離された該試料のパネル(panel)を使用した。各々の遺伝子の発現値は、ハウスキーピング対照遺伝子(housekeeping control gene)PBGDに対して正規化した(normalized)。L1CAM、NTRK3、PLABおよびgp100に対するRT−PCR結果とマイクロアレイ結果との間の相関係数は、それぞれ、0.79、0.86、0.87および0.88である。この結果は、該RT−PCR結果が該マイクロアレイデータと非常によく一致していることを示している。
【0103】
実施例5
特異的発現遺伝子の経路解析(pathway analysis)
インジェニュイティ(Ingenuity)(登録商標)経路解析ソフトウェアアプリケーション(Pathway Analysis Software Application)[カリフォルニア州マウンテンビュー(Mountain View)、インジェニュイティ社(Ingenuity)]を用いて、黒色腫に特異的に発現する遺伝子の機能解析を行った。0.05未満のp値を有する標準的経路(canonical pathways)または機能的カテゴリーを選定した。無作為に選定した遺伝子を用いて、標準的経路の同定の特異性について試験した。
【0104】
黒色腫を良性組織および正常組織から識別する潜在的機構(potential mechanism)に関する更なる識見を得るために、本発明者らは、インジェニュイティ経路解析ソフトウェアを使用して、黒色腫に関連する標準的経路を同定した。それらの結果を解析して、アミロイドプロセシングにおける遺伝子の多くは、黒色腫試料において発現上昇されることが明らかとなった。本発明者らの観察結果が特異的であることを立証するために、本発明者らは、アフィメトリクス(Affymetrix)Hu133Aマイクロアレイから遺伝子の3つの無作為リストを選定し、次いで、それらのインジェニュイティ経路解析を行った。これらのリストはいずれも、アミロイドプロセシング(amyloid processing)に対しても、他のどの標準的経路に対しても、有意な関連性を示さなかった。黒色腫に関するこの標準的経路の活性化を確認するため、該経路に関する全ての遺伝子の遺伝子発現データを検索した。黒色腫組織と良性母斑組織/正常皮膚組織との間の特異的発現のp値とフォールドチェンジ(fold-change)とを算出した。アミロイドプロセシング経路に含まれる34個の遺伝子[エスラー(Esler)等(2001)およびジアンコッチ(Giancotti)等(1999)]のうち25個は、発現上昇の傾向を例証し、また、それらの19個(56%)に対する特異的発現は、統計的に有意であった(p値<0.05;図4)。本発明者らは、追加的対照として、類似番号の遺伝子を有する2つの代謝経路(metabolic pathways)を無作為に選定した。アラニン(alanine)合成経路に関する63個の遺伝子のうち、それらの8個(13%)は、有意な発現上昇を示し、p値は0.05未満であった。ヒスチジン(histidine)合成経路に関する47個の遺伝子のうち、僅か2個の遺伝子(4%)は、同一の判定基準を使用して見出だされた。本発明者らのデータによって初めて、アミロイドプロセシング経路の活性化が悪性黒色腫に含まれることが、強く示された。
【0105】
実施例6
マイクロアレイ結果のRT−PCRによる確認
各々の試料からの全RNA10μgを、DNaseIで処理し、次いで、製造業者の取扱説明書[カリフォルニア州カールズバッド(Carlsbad)、インビトロジェン社(Invitrogen)]に従い、スーパースクリプト(Superscript)II逆転写酵素を用いて、オリゴ(dT)プライマーで逆転写させた。対照遺伝子PBGDは、事前に試験が行なわれ、ハウスキーピング遺伝子として報告された[バンデサンペレ(Vandesompele)等(2003)]。me20m(gp100)、L1CAM、NTRK3および対照遺伝子PBGDのためのプライマーとMGBプローブとは、プライマー・エクスプレス(Primer Express)ソフトウェアを用いて設計した[カリフォルニア州フォスターシティー(Foster City)、アプライド・バイオシステムズ社(Applied Biosystems)]。PLAB(MIC1)遺伝子プローブは、TAMRAベースであった。なぜなら、MGBベースプローブを設計するには、配列が不十分であったからである。プライマー/プローブ配列は、次の通りである。
【0106】
【表11】

プライマーおよびプローブは全て、90%を超える最適増幅効率を得るために試験を行った。標準曲線は、10〜106の範囲のコピー数(copy numbers)を有する、標的遺伝子のPCR生成物の、6個の10倍希釈物で構成された。RT−PCRによる増幅は、テンプレートcDNA50ngと、2×TaqMan(登録商標)ユニバーサルPCRマスター混合物(12.5μL)[カリフォルニア州フォスターシティー、アプライド・バイオシステムズ社]と、500nMのフォワードプライマーおよびリバースプライマーと、250nMのプローブとを含有する20μL反応混合物で実施した。反応は、ABI PRISM 7900HT配列検出装置(Sequence Detection System)[カリフォルニア州フォスターシティー、アプライド・バイオシステムズ社]で行った。サイクリング条件は、50℃で2分間のAmpErase UNG活性化、95℃で10分間のポリメラーゼ活性化、95℃で15秒間の50サイクル、および、60秒間のアニーリング温度(60℃)であった。各々のアッセイにおいて、テンプレートcDNAと共に標準曲線およびブランク試料液(no-template control)は、関心ある遺伝子と対照遺伝子との両方の複製の中に含めた。各々の標的遺伝子の相対量は、ΔCtと表わした。ΔCtは、対照遺伝子のCtによって減算された、標的遺伝子のCtと同等である。
【0107】
前記マイクロアレイ解析によって同定された、黒色腫特異の遺伝子を確認するために、4種の遺伝子(L1CAM、NTRK3、PLABおよびgp100)を選定して、定量的リアルタイムRT−PCRによる確認を行った(図4)。各々の遺伝子の発現値は、ハウスキーピング対照PBGDに対して正規化した。L1CAM、NTRK3、PLABおよびgp100についての、該RT−PCR結果と該マイクロアレイ結果との間の相関係数はそれぞれ、0.79、0.86、0.87および0.88であり、このことは、該RT−PCR結果が、マイクロアレイのデータと非常によく一致することを示している。
【0108】
実施例7
RNAに特異的なプライマーを用いたワンステップ定量的RT−PCRアッセイ、および、カットオフの設定
選定された遺伝子の発現の評価は、初期の黒色腫、良性母斑、正常皮膚、黒色腫リンパ節の転移部、および、黒色腫非含有リンパ節由来のRNAを用いたワンステップRT−PCRによって行った。それら反応におけるRNAの入力質量および入力品質のための対照に対するハウスキーピング遺伝子として、βアクチンを使用した。DNase処置は使用しなかった。その代わりに、プライマーまたはプローブは、それらがゲノムDNAについて記録しないよう、イントロンに及ぶように設計した。該RT−PCRのために全RNA8ngを使用した。全RNAは、TaqMan(登録商標)ワンステップ(One Step)PCRマスター・ミックス・リージェンツ・キット(Master Mix Reagents Kit)[カリフォルニア州フォスターシティー、アプライド・バイオシステムズ社]に入っている40Xマルチスクライブ(Multiscribe)およびRNaseインヒビター混合物を使用して、全RNAを逆転写させた。次いで、UNGを含有しない2×マスター混合物にcDNAをさらし、次いで、ABI 7900HT配列検定装置[カリフォルニア州フォスターシティー、アプライド・バイオシステムズ社]によって、10μLの反応サイズ(reaction size)を使用する384ウェルブロックフォーマット(384-well block format)でPCR増幅を行った。プライマーおよびプローブの濃度は、それぞれ、4μMおよび2.5μMであった。反応混合物は、逆転写を行うために48℃で30分間低温放置し、次いで、95℃で10分間のアンプリタック(Amplitaq)活性化段階にかけ、最終的に、95℃で15秒間の変性段階と60℃で1分間のアニールおよび延伸の段階との40サイクルにかけた。各々のプレートによる標準曲線は、8pgから80ngまで作り出され、R2値が0.99より大きくなった時、サイクル閾(Cycle Threshold)(Ct)値を受け入れた。
【0109】
それらの反応で使用した配列は次の通りであり、それぞれ、5'→3'方向に記載されている。
【0110】
【表12】

各々の試料について、ΔCt=Ct(標的遺伝子)−Ct(βアクチン)を算出した。ΔCtは、臨床的RT−PCRアッセイにおいて広く用いられており、また、簡便法(straightforward method)として選定された[クローニン(Cronin)等(2004)]。初期試料とリンパ節試料とを含む、黒色腫試料と非黒色腫試料との間のΔCtについてのt検定を行った。本発明者らは、次いで、ΔCtを用いて、各々の患者に対する2つのスコア(scores)を組み立てた。一方のスコアは、黒色腫に特異な2個の遺伝子、PLABおよびL1CAM、の組合せから誘導した。他方のスコアは、従来の3個の黒色腫マーカー、チロシナーゼ、gp100およびMART1、の組合せから誘導した。該スコアは、重みとして対応する統計量tを有する、試験した遺伝子のΔCt値の重み付き合計として規定された。2つのスコアは、同一尺度でそれらを比較するために、同一の意味を有するように正規化した。
【0111】
本発明者らは、悪性黒色腫(初期黒色腫および黒色腫リンパ節転移部)試料、良性メラニン形成細胞(良性皮膚母斑)試料ならびに正常(正常皮膚および黒色腫非含有リンパ節)試料を含む様々な臨床的組織試料で、RT−PCRによって、黒色腫遺伝子に著しく過剰発現した2個、PLABおよびL1CAM、の組合せを調べた。初期組織は、マイクロアレイ研究のために使用したものと同一であったが、リンパ節試料は全て、独立した患者から得られた。従来の黒色腫マーカー(例えば、チロシナーゼ、gp100およびMART1)も、対照として同一試料で調べた。なぜなら、それらは、現行の臨床研究における黒色腫分子アッセイのために最も一般的に使用されているマーカーであるからである[リンボルディ(Rimboldi)等(2003)、エーブラハムセン(Abrahamsen)等(2005)およびカンムラ(Kammula)等(2004)]。算出されたスコアは、PLABおよびL1CAMについては図4Aに、また、チロシナーゼ、gp100およびMART1については図4Bに示した。これらの結果によって、悪性黒色腫(初期黒色腫およびリンパ節転移部)試料と良性母斑および正常リンパ節との間でPLABおよびL1CAMの発現に有意差があることが例証された。対照的に、従来の3個のマーカーは、良性試料および黒色腫試料に類似の発現レベルを示した。遺伝子マーカーの、良性組織と悪性組織とを類別する能力を更に例証するために、本発明者らは、2つのカットオフを調べた。第1のカットオフは初期の正常試料における最大スコアとして設定し、また、第2のカットオフは、良性母斑試料における最大スコアとして設定した。本発明者らは、各々のカットオフについて、リンパ節試料の感度を評価した。該正常試料に基づいて決定されたカットオフを用いれば、新規なマーカーおよび従来のマーカーは、それぞれ、90%および83%の感度を提供した。該良性試料に基づいて決定されたカットオフを用いれば、新規なマーカーおよび従来のマーカーの感度は、それぞれ、88%および42%であった。これらの結果によって、それらの新規なマーカーは、良性メラニン形成細胞および悪性メラニン形成細胞を含む組織を識別する、より優れた能力を潜在的に有することが示される。
【0112】
実施例8
多重アッセイ(Multiplex Assay)
材料および方法
各々の反応は、下記のもの:
フォワードプライマー 400nM
リバースプライマー 500nM
PLABプローブ 150nM
チロシナーゼプローブ 300nM
L1CAMプローブ 200nM
PBGDプローブ 200nM
Tth 5U
AbTP6−25 1μg
グリセロール 10%
Tris−HCl 3.7mM
NaCl 4mM
EDTA 0.004mM
Tween−20 0.22%
NP−40 0.02%
DTT 0.04mM
水酸化ナトリウム 20.5mM
ビシン(bicine) 50mM
酢酸カリウム 115mM
ウシアルブミン 5μg
トレハロース(trehalose) 0.15M
dNTP それぞれ0.2mM
MgCl2 0.5mM
MnSO4 3.5mM
プライマー それぞれ300nM
プローブ それぞれ200nM、
を含有する25μLの最終容量で設定した。
表13に、それらのプライマーおよびプローブの配列を提供する。
【0113】
【表13】

前記諸反応は、FamチャネルのPLAB、Cy3チャネルのチロシナーゼ、Texas RedチャネルのL1CAM、および、Cy5チャネルのPBGDを用いて行った。使用したサイクリングのプロトコルは、以下に記述されるが、完了するのに30分かかる。
95℃×15秒、
65℃×420秒、
95℃で5秒間、
62℃で15秒間−蛍光読み値(fluor read)
の40°サイクル
【0114】
使用した閾値は、Famチャネルで30、Cy3チャネルで20、Texas Redチャネルで20、Cy5チャネルで20である。Cy3チャネルおよびTexas Redチャネルで使用した閾値は、低下させることができる。表14に、得られた結果をまとめる。
【0115】
【表14】

Ctカットオフ:
L1CAM 27
PLAB 29
チロシナーゼ 23
ME20M(gp100) 23.5
【0116】
注意:これらのデータは、ヘマトキシリン・エオジン染色の病理学(H&E pathology)に対してのみ基準となる。前記の4つの反応の各々における増幅効率は高く、しかも、該反応はまた、(全ての場合において、>0.99であるR2値によって判定されるように)5 logsを上回る直線性である。したがって、これらのデータは、ワーキング4プレックスの迅速アッセイを例証する。これらのデータは、PLABが、L1CAMと共に達成される第1のマーカーであり、かつ、相補的であり、感度を更に増大させることを示唆している。必要に応じて、第3のマーカーとしてのチロシナーゼを添加すれば、L1CAMおよびPLABが更に相補されて、感度が増大する。チロシナーゼは、必要ならば、残りのマーカーの性能に悪影響を及ぼすことなく、アッセイから取り除くことができる。
【0117】
解説
本発明者らは、リンパ節分子の病期診断アッセイにおいて潜在的に使用される、黒色腫特異の遺伝子マーカーを見出だすために、初期黒色腫、良性母斑および正常皮膚組織の試料の遺伝子発現プロフィール解析を行った。悪性黒色腫試料に特異的にかつ非常によく発現する新規な複数の遺伝子を同定した。実験設計に良性母斑を含ませることが、本発明者らの研究の秘訣(key)であった。良性母斑中のメラニン形成細胞含有量は、正常皮膚とは対照的に、黒色腫中のメラニン形成細胞含有量に近い。このことは、組織学的評価に加えて、
黒色腫試料と母斑組織試料との両方に対する、従来の黒色腫マーカー(例えば、チロシナーゼおよびMART1)の発現レベルが同等に高いことによって確認された。類似の細胞組成(cellular composition)によって、本発明者らは、メラニン形成細胞の系統分化(lineage differentiation)と関連するだけでなく、メラニン形成細胞の悪性転換(malignant transformation:悪性化)と特異的に関連する遺伝子発現の変化を監視することができた。その結果、本発明者らは、黒色腫に対して特異的に過剰発現する新規な複数の遺伝子を同定した。黒色腫に対して非常によく過剰発現するそれら新規な遺伝子の1つである、前立腺特異因子(PLAB、MICI)は、トランスフォーミング増殖因子−βスーパーファミリー(transforming growth factor-beta superfamily)のメンバーであり、他の悪性疾患と関連していることも知られている[ベ(Bae)等(2003)およびウェルシュ(Welsh)等(2003)]。PLABは、細胞粘着(cell adhesion)を減少させ[ヤマウチ(Yamauchi)等(2003)]、黒色腫の進行におけるそれの潜在的役割に影響を与える。黒色腫に対する過剰発現遺伝子の経路解析は、これらの遺伝子の多くが神経組織の機能(functioning)および成長に属していることを示し、また、メラニン形成細胞の脱分化(dedifferentiation)と多能化性前駆細胞(pluripotent progenitor cell)に関連する過程の活性化とは、黒色腫の成長および進行にとって重要であるのかもしれないということを示唆した。更に、標準的経路(canonical pathways)の解析によって、アミロイドプロセシングに関連する神経組織は、黒色腫に有意に変調される(modulated)ことが分かった。アミロイドプロセシング(APP)経路それ自体は、以前、黒色腫の成長および進行と関連していなかった。アミロイドプロセシング経路に関する多くの遺伝子[例えば、β−およびγ−セクレターゼ(secretase)ファミリー(BACE2,PSEN2)のメンバー]もまた、ノッチ(Notch)経路に関与し、ノッチ経路とアミロイドプロセシング経路との両方における内在性膜タンパク質(integral membrane proteins)を開裂する役割を果たす[エスラー(Esler)等(2001)]。ノッチ経路は、分化を抑制し、また、神経堤幹細胞(neural crest stem cells)を未分化状態に維持するのを助ける[ガンジェミ(Gangemi)等(2004)]。また、ノッチ経路の黒色腫への関与、とりわけ、γ−セクレターゼの役割は、多くの研究の焦点となっている[フック(Hoek)等(2004)、バルディ(Baldi)等(2003)およびウィルソン(Wilson)等(2000)]。
【0118】
我々本発明者らは、我々の結果をハク(Haqq)等(2005)の最近の研究と比較した。ハク等の研究における20,862個のプローブを含有するcDNAマイクロアレイを使用して、良性母斑試料、初期黒色腫試料および転移性黒色腫試料のプロフィールをまとめた。その試料セットには、転移性黒色腫、初期黒色腫および良性母斑が含まれた。彼等の研究においては、良性母斑組織と初期悪性黒色腫組織とが類別された類似のクラスタリング結果が見出だされた。両方の研究において、黒色腫を良性母斑から識別することのできる共通の遺伝子であって、キネシン様(kinesin-like)5(KNSL5)、前立腺分化因子(PLAB)、CITEDI、オステオポンチン(osteopontin)(SPPI)、カテプシン(cathepsin)B(CSTB)、カドヘリン(cadherin)3(CDH3)、プレセニリン(presenilin)2(PSEN2)を包含する遺伝子が報告された。
【0119】
ワンステップRT−PCRアッセイに関する本発明者らの結果によって、新規な黒色腫特異遺伝子であるPLABおよびL1CAMは、初期黒色腫組織に対してだけでなく、黒色腫リンパ節転移部に対しても発現することが例証された。更に、前記の新規遺伝子は、悪性黒色腫を良性母斑から識別する能力によって、黒色腫診断装置の分子試験のための従来の諸マーカーに比べてより優れた候補となる。臨床的研究で更なる確認を行うことによって、これらの新規遺伝子は、分子的病期診断アッセイ(molecular staging assay)のための特異マーカーとして開発されて、前哨リンパ節(SLN)の生体組織検査操作が行われる間に黒色腫の微小転移を検出することができるであろう。これらの新規遺伝子のもう1つの潜在的用途は、不確実な病理学的特徴を有する色素細胞性病変を診断するものである。
【0120】
前述の発明は、理解を明瞭にする目的で、説明図および実施例によってある程度詳細に記述されてきたものの、それらの説明図および実施例は、本発明の範囲を制限するものと解釈されるべきでない。
【0121】
【表15−1】

【表15−2】

【0122】
【表15−3】

【表15−4】

【0123】
【表15−5】

【表15−6】

【0124】
【表15−7】

【表15−8】

【0125】
【表15−9】

【表15−10】

【0126】
【表15−11】

【表15−12】

【0127】
【表15−13】

【表15−14】

【0128】
【表15−15】

【表15−16】

【0129】
【表15−17】

【表15−18】

【0130】
【表15−19】

【表15−20】

【0131】
【表15−21】

【表15−22】

【0132】
〔実施の態様〕
(1)黒色腫を同定する方法において、
a.組織試料を得る段階と、
b.PLAB(配列ID番号:1)およびL1CAM(配列ID番号:2);または、
PLAB、L1CAMおよびNTRK3(配列ID番号:3)、
に対応するmRNAをコードする遺伝子の、前記試料中の発現レベルを測定する段階と、
を含み、
所定のカットオフレベル(cut-off levels)を超える前記遺伝子発現レベルが、前記試料中に黒色腫が存在することを示す、
方法。
(2)実施態様1に記載の方法において、
チロシナーゼ(配列ID番号:999)をコードする遺伝子の発現レベルを測定する段階、
を更に含む、方法。
(3)実施態様1に記載の方法において、
前記試料中で構成的に発現した遺伝子の発現レベルを測定する段階、
を更に含む、方法。
(4)実施態様3に記載の方法において、
前記遺伝子は、PBGD(配列ID番号:979)をコードする、方法。
(5)実施態様1に記載の方法において、
配列ID番号:29〜978から成る群から選ばれるpsidに対応するmRNAをコードする少なくとも1種の遺伝子の発現レベルを測定する段階、
を更に含む、方法。
(6)実施態様1〜5のいずれか1項に記載の方法において、
前記試料は、リンパ節から得られる、方法。
(7)実施態様6に記載の方法において、
前記リンパ節は、前哨リンパ節である、方法。
(8)実施態様1〜5のいずれか1項に記載の方法において、
前記試料は、生体組織検査法によって得られる、方法。
(9)実施態様1〜5のいずれか1項に記載の方法において、
手術中に実施される、方法。
(10)実施態様1〜5のいずれか1項に記載の方法において、
前記黒色腫は、微小転移巣である、方法。
(11)実施態様1〜5のいずれか1項に記載の方法において、
特異度および感度は、黒色腫の転移部を検出するのに十分である、方法。
(12)実施態様11に記載の方法において、
前記特異性は、ヘマトキシリン・エオジン染色(hematoxylin and eosin)(H&E)陰性リンパ節(negative nodes)と免疫組織化学(immunohistochemical)(IHC)陰性リンパ節との比較に基づき少なくとも95%である、方法。
(13)実施態様11に記載の方法において、
前記特異性は、ヘマトキシリン・エオジン染色陰性リンパ節と免疫組織化学陰性リンパ節との比較に基づき少なくとも97%である、方法。
(14)実施態様11に記載の方法において、
前記特異性は、ヘマトキシリン・エオジン染色陰性リンパ節と免疫組織化学陰性リンパ節との比較に基づき少なくとも99%である、方法。
(15)実施態様11に記載の方法において、
前記感度は、ヘマトキシリン・エオジン染色陽性リンパ節(positive nodes)と免疫組織化学陽性リンパ節との比較に基づき少なくとも80%である、方法。
(16)実施態様11に記載の方法において、
前記感度は、ヘマトキシリン・エオジン染色陽性リンパ節と免疫組織化学陽性リンパ節との比較に基づき少なくとも85%である、方法。
(17)実施態様11に記載の方法において、
前記感度は、ヘマトキシリン・エオジン染色陽性リンパ節と免疫組織化学陽性リンパ節との比較に基づき少なくとも90%である、方法。
(18)実施態様11に記載の方法において、
前記特異性は、ヘマトキシリン・エオジン染色陰性リンパ節と免疫組織化学陰性リンパ節との比較に基づき少なくとも97%であり、かつ、前記感度は、ヘマトキシリン・エオジン染色陽性リンパ節と免疫組織化学陽性リンパ節との比較に基づき少なくとも85%である、方法。
(19)実施態様1〜5のいずれか1項に記載の方法において、
前記の所定のカットオフレベルは、悪性黒色腫を有する組織では、良性メラニン形成細胞または正常組織と比べて少なくとも2倍の過剰発現である、方法。
(20)実施態様1〜5のいずれか1項に記載の方法において、
遺伝子発現は、マイクロアレイまたは遺伝子チップによって測定される、方法。
(21)実施態様1〜5のいずれか1項に記載の方法において、
遺伝子発現は、前記試料から抽出したRNAのポリメラーゼ連鎖反応(polymerase chain reaction)(PCR)によって行われる核酸増幅によって決定される、方法。
(22)実施態様21に記載の方法において、
前記ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)生成物は、配列ID番号:25〜28の少なくとも1種を含有する、方法。
(23)実施態様22に記載の方法において、
前記PCR生成物は、蛍光化合物を含有する、方法。
(24)実施態様23に記載の方法において、
前記蛍光化合物は、Fam、Texas Red、Cal Red、C1、Cy5およびCy3から成る群から選ばれる、方法。
(25)実施態様24に記載の方法において、
前記蛍光化合物は、適用可能である、PLAB:Fam;L1CAM:Texas Red、または、Cal Red;チロシナーゼ:C1;PBGD:Cy5に対応する、方法。
(26)実施態様21に記載の方法において、
前記PCRは、逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR)である、方法。
(27)実施態様26に記載の方法において、
前記RT−PCRは、1種以上の内部対照試薬を更に含有する、方法。
(28)実施態様21に記載の方法において、
a.前記試料を均質化してホモジネート(homogenate)を生成する段階と、
b.RNA結合性物質を含有する基質(substrate)、または、RNA結合物質が固定される基質に前記ホモジネートを接触させる段階と、
c.RNAを、前記RNA結合性物質に結合させる段階と、
d.あらゆる汚染物質、干渉物質(interferents)および非結合RNAを除去するのに十分な条件の下、前記基質を洗浄する段階と、
e.前記基質から結合RNAを溶出する段階と、
によって、前記RNAが前記試料から抽出される、方法。
(29)実施態様1〜5のいずれか1項に記載の方法において、
前記試料中のメラニンを減少させる段階、
を更に含む、方法。
(30)実施態様29に記載の方法において、
前記試料を均質化してホモジネートを生成し、次いで、メラニンが付着するか、結合するか、または、固定されるマトリックスに前記ホモジネートを通過させることによって、メラニン濃度を減少させる、方法。
(31)実施態様30に記載の方法において、
前記マトリックスは、ポリマービーズ(polymer beads)を含有する、方法。
(32)実施態様30に記載の方法において、
前記マトリックスは、シリカを含有する、方法。
(33)実施態様28に記載の方法において、
前記RNAは、約8分間未満で抽出される、方法。
(34)実施態様28に記載の方法において、
前記RNAは、約6分間未満で抽出される、方法。
(35)実施態様1〜5のいずれか1項に記載の方法において、
遺伝子発現は、前記遺伝子によってコードされたタンパク質を測定することによって測定される、方法。
(36)実施態様35に記載の方法において、
前記タンパク質は、前記タンパク質に特異な抗体によって検出される、方法。
(37)黒色腫を同定する方法において、
a.組織試料を得る段階と、
b.配列ID番号:4〜6もしくは配列ID番号:7〜9、および、配列ID番号:10〜12もしくは配列ID番号:13〜15;または、
配列ID番号:4〜6もしくは配列ID番号:7〜9、および、配列ID番号:10〜12もしくは配列ID番号:13〜15、および、配列ID番号:16〜18、
から成る群から選ばれるプライマー/プローブのセットによって認識されるmRNAをコードする遺伝子の、前記試料中の発現レベルを測定する段階と、
を含み、
所定のカットオフレベルを超える前記遺伝子発現レベルが、前記試料中に黒色腫が存在することを示す、
方法。
(38)実施態様37に記載の方法において、
チロシナーゼ(配列ID番号:999)をコードする遺伝子の発現レベルを測定する段階、
を更に含む、方法。
(39)実施態様37に記載の方法において、
前記試料中で構成的に発現した遺伝子の発現レベルを測定する段階、
を更に含む、方法。
(40)実施態様39に記載の方法において、
前記遺伝子は、PBGD(配列ID番号:979)をコードする、方法。
(41)実施態様37に記載の方法において、
配列ID番号:29〜978から成る群から選ばれるpsidに対応するmRNAをコードする少なくとも1種の遺伝子の発現レベルを測定する段階、
を更に含む、方法。
(42)実施態様37〜41のいずれか1項に記載の方法において、
前記試料は、リンパ節から得られる、方法。
(43)実施態様42に記載の方法において、
前記リンパ節は、前哨リンパ節である、方法。
(44)実施態様37〜41のいずれか1項に記載の方法において、
前記試料は、生体組織検査法によって得られる、方法。
(45)実施態様37〜41のいずれか1項に記載の方法において、
手術中に実施される、方法。
(46)実施態様37〜41のいずれか1項に記載の方法において、
前記黒色腫は、微小転移巣である、方法。
(47)実施態様37〜41のいずれか1項に記載の方法において、
特異度および感度は、黒色腫の転移部を検出するのに十分である、方法。
(48)実施態様47に記載の方法において、
前記特異性は、ヘマトキシリン・エオジン染色(H&E)陰性リンパ節と免疫組織化学(IHC)陰性リンパ節との比較に基づき少なくとも95%である、方法。
(49)実施態様47に記載の方法において、
前記特異性は、ヘマトキシリン・エオジン染色陰性リンパ節と免疫組織化学陰性リンパ節との比較に基づき少なくとも97%である、方法。
(50)実施態様47に記載の方法において、
前記特異性は、ヘマトキシリン・エオジン染色陰性リンパ節と免疫組織化学陰性リンパ節との比較に基づき少なくとも99%である、方法。
(51)実施態様47に記載の方法において、
前記感度は、ヘマトキシリン・エオジン染色陽性リンパ節と免疫組織化学陽性リンパ節との比較に基づき少なくとも80%である、方法。
(52)実施態様47に記載の方法において、
前記感度は、ヘマトキシリン・エオジン染色陽性リンパ節と免疫組織化学陽性リンパ節との比較に基づき少なくとも85%である、方法。
(53)実施態様47に記載の方法において、
前記感度は、ヘマトキシリン・エオジン染色陽性リンパ節と免疫組織化学陽性リンパ節との比較に基づき少なくとも90%である、方法。
(54)実施態様47に記載の方法において、
前記特異性は、ヘマトキシリン・エオジン染色陰性リンパ節と免疫組織化学陰性リンパ節との比較に基づき少なくとも97%であり、かつ、前記感度は、ヘマトキシリン・エオジン染色陽性リンパ節と免疫組織化学陽性リンパ節との比較に基づき少なくとも85%である、方法。
(55)実施態様37〜41のいずれか1項に記載の方法において、
前記所定のカットオフレベルは、悪性黒色腫を有する組織では、良性メラニン形成細胞または正常組織と比べて少なくとも2倍の過剰発現である、方法。
(56)実施態様37〜41のいずれか1項に記載の方法において、
遺伝子発現は、マイクロアレイまたは遺伝子チップによって測定される、方法。
(57)実施態様37〜41のいずれか1項に記載の方法において、
遺伝子発現は、前記試料から抽出したRNAのポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によって行われる核酸増幅によって決定される、方法。
(58)実施態様57に記載の方法において、
前記ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)生成物は、配列ID番号:25〜28の少なくとも1種を含有する、方法。
(59)実施態様57に記載の方法において、
前記PCR生成物は、蛍光化合物を含有する、方法。
(60)実施態様59に記載の方法において、
前記蛍光化合物は、Fam、Texas Red、Cal Red、C1、Cy5およびCy3から成る群から選ばれる、方法。
(61)実施態様60に記載の方法において、
前記蛍光化合物は、適用可能である、PLAB:Fam;L1CAM:Texas Red、または、Cal Red;チロシナーゼ:C1;PBGD:Cy5に対応する、方法。
(62)実施態様57に記載の方法において、
前記PCRは、逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR)である、方法。
(63)実施態様62に記載の方法において、
前記RT−PCRは、1種以上の内部対照試薬を更に含有する、方法。
(64)実施態様57に記載の方法において、
a.前記試料を均質化してホモジネートを生成する段階と、
b.RNA結合性物質を含有する基質、または、RNA結合物質が固定される基質に前記ホモジネートを接触させる段階と、
c.RNAを、前記RNA結合性物質に結合させる段階と、
d.あらゆる汚染物質、干渉物質および非結合RNAを除去するのに十分な条件の下、前記基質を洗浄する段階と、
e.前記基質から結合RNAを溶出する段階と、
によって、前記RNAが前記試料から抽出される、方法。
(65)実施態様37〜41のいずれか1項に記載の方法において、
前記試料中のメラニンを減少させる段階、
を更に含む、方法。
(66)実施態様65に記載の方法において、
前記試料を均質化してホモジネートを生成し、次いで、メラニンが付着するか、結合するか、または、固定されるマトリックスに前記ホモジネートを通過させることによって、メラニン濃度を減少させる、方法。
(67)実施態様66に記載の方法において、
前記マトリックスは、ポリマービーズを含有する、方法。
(68)実施態様66に記載の方法において、
前記マトリックスは、シリカを含有する、方法。
(69)実施態様64に記載の方法において、
前記RNAは、約8分間未満で抽出される、方法。
(70)実施態様64に記載の方法において、
前記RNAは、約6分間未満で抽出される、方法。
(71)実施態様37〜41のいずれか1項に記載の方法において、
遺伝子発現は、前記遺伝子によってコードされたタンパク質を測定することによって測定される、方法。
(72)実施態様71に記載の方法において、
前記タンパク質は、前記タンパク質に特異な抗体によって検出される、方法。
(73)悪性メラニン形成細胞を良性メラニン形成細胞から識別する方法において、
a.組織試料を得る段階と、
b.PLAB(配列ID番号:1)およびL1CAM(配列ID番号:2);または、
PLAB、L1CAMおよびNTRK3(配列ID番号:3)、
をコードする遺伝子の、前記試料中の発現レベルを測定する段階と、
を含み、
所定のカットオフレベルを超える前記遺伝子発現レベルが、前記試料中に悪性メラニン形成細胞が存在することを示す、
方法。
(74)実施態様73に記載の方法において、
チロシナーゼ(配列ID番号:999)をコードする遺伝子の発現レベルを測定する段階、
を更に含む、方法。
(75)実施態様73に記載の方法において、
前記試料中で構成的に発現した遺伝子の発現レベルを測定する段階、
を更に含む、方法。
(76)実施態様75に記載の方法において、
前記遺伝子は、PBGD(配列ID番号:979)をコードする、方法。
(77)実施態様73に記載の方法において、
配列ID番号:29〜978から成る群から選ばれるpsidに対応するmRNAをコードする少なくとも1種の遺伝子の発現レベルを測定する段階、
を更に含む、方法。
(78)実施態様73〜77のいずれか1項に記載の方法において、
前記試料は、リンパ節から得られる、方法。
(79)実施態様78に記載の方法において、
前記リンパ節は、前哨リンパ節である、方法。
(80)実施態様73〜77のいずれか1項に記載の方法において、
前記試料は、生体組織検査法によって得られる、方法。
(81)実施態様73〜77のいずれか1項に記載の方法において、
手術中に実施される、方法。
(82)実施態様73〜77のいずれか1項に記載の方法において、
前記黒色腫は、微小転移巣である、方法。
(83)実施態様73〜77のいずれか1項に記載の方法において、
特異度および感度は、黒色腫の転移部を検出するのに十分である、方法。
(84)実施態様83に記載の方法において、
前記特異性は、ヘマトキシリン・エオジン染色(H&E)陰性リンパ節と免疫組織化学(IHC)陰性リンパ節との比較に基づき少なくとも95%である、方法。
(85)実施態様83に記載の方法において、
前記特異性は、ヘマトキシリン・エオジン染色陰性リンパ節と免疫組織化学陰性リンパ節との比較に基づき少なくとも97%である、方法。
(86)実施態様83に記載の方法において、
前記特異性は、ヘマトキシリン・エオジン染色陰性リンパ節と免疫組織化学陰性リンパ節との比較に基づき少なくとも99%である、方法。
(87)実施態様83に記載の方法において、
前記感度は、ヘマトキシリン・エオジン染色陽性リンパ節と免疫組織化学陽性リンパ節との比較に基づき少なくとも80%である、方法。
(88)実施態様83に記載の方法において、
前記感度は、ヘマトキシリン・エオジン染色陽性リンパ節と免疫組織化学陽性リンパ節との比較に基づき少なくとも85%である、方法。
(89)実施態様83に記載の方法において、
前記感度は、ヘマトキシリン・エオジン染色陽性リンパ節と免疫組織化学陽性リンパ節との比較に基づき少なくとも90%である、方法。
(90)実施態様83に記載の方法において、
前記特異性は、ヘマトキシリン・エオジン染色陰性リンパ節と免疫組織化学陰性リンパ節との比較に基づき少なくとも97%であり、かつ、前記感度は、ヘマトキシリン・エオジン染色陽性リンパ節と免疫組織化学陽性リンパ節との比較に基づき少なくとも85%である、方法。
(91)実施態様73〜77のいずれか1項に記載の方法において、
前記所定のカットオフレベルは、悪性黒色腫を有する組織では、良性メラニン形成細胞または正常組織と比べて少なくとも2倍の過剰発現である、方法。
(92)実施態様73〜77のいずれか1項に記載の方法において、
遺伝子発現は、マイクロアレイまたは遺伝子チップによって測定される、方法。
(93)実施態様73〜77のいずれか1項に記載の方法において、
遺伝子発現は、前記試料から抽出したRNAのポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によって行われる核酸増幅によって決定される、方法。
(94)実施態様93に記載の方法において、
前記ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)生成物は、配列ID番号:25〜28の少なくとも1種を含有する、方法。
(95)実施態様93に記載の方法において、
前記PCR生成物は、蛍光化合物を含有する、方法。
(96)実施態様95に記載の方法において、
前記蛍光化合物は、Fam、Texas Red、Cal Red、C1、Cy5およびCy3から成る群から選ばれる、方法。
(97)実施態様96に記載の方法において、
前記蛍光化合物は、適用可能である、PLAB:Fam;L1CAM:Texas Red、または、Cal Red;チロシナーゼ:C1;PBGD:Cy5に対応する、方法。
(98)実施態様93に記載の方法において、
前記PCRは、逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR)である、方法。
(99)実施態様98に記載の方法において、
前記RT−PCRは、1種以上の内部対照試薬を更に含有する、方法。
(100)実施態様93に記載の方法において、
a.前記試料を均質化してホモジネートを生成する段階と、
b.RNA結合性物質を含有する基質、または、RNA結合物質が固定される基質に前記ホモジネートを接触させる段階と、
c.RNAを、前記RNA結合性物質に結合させる段階と、
d.あらゆる汚染物質、干渉物質および非結合RNAを除去するのに十分な条件の下、前記基質を洗浄する段階と、
e.前記基質から結合RNAを溶出する段階と、
によって、前記RNAが前記試料から抽出される、方法。
(101)実施態様73〜77のいずれか1項に記載の方法において、
前記試料中のメラニンを減少させる段階、
を更に含む、方法。
(102)実施態様101に記載の方法において、
前記試料を均質化してホモジネートを生成し、次いで、メラニンが付着するか、結合するか、または、固定されるマトリックスに前記ホモジネートを通過させることによって、メラニン濃度を減少させる、方法。
(103)実施態様102に記載の方法において、
前記マトリックスは、ポリマービーズを含有する、方法。
(104)実施態様102に記載の方法において、
前記マトリックスは、シリカを含有する、方法。
(105)実施態様100に記載の方法において、
前記RNAは、約8分間未満で抽出される、方法。
(106)実施態様100に記載の方法において、
前記RNAは、約6分間未満で抽出される、方法。
(107)実施態様73〜77のいずれか1項に記載の方法において、
遺伝子発現は、前記遺伝子によってコードされたタンパク質を測定することによって測定される、方法。
(108)実施態様107に記載の方法において、
前記タンパク質は、前記タンパク質に特異な抗体によって検出される、方法。
(109)悪性メラニン形成細胞を良性メラニン形成細胞から識別する方法において、
a.組織試料を得る段階と、
b.配列ID番号:4〜6もしくは配列ID番号:7〜9、および、配列ID番号:10〜12もしくは配列ID番号:13〜15;または、
配列ID番号:4〜6もしくは配列ID番号:7〜9、および、配列ID番号:10〜12もしくは配列ID番号:13〜15、および、配列ID番号:16〜18、
から成る群から選ばれるプライマー/プローブのセットによって認識される遺伝子の、前記試料中の発現レベルを測定する段階と、
を含み、
所定のカットオフレベルを超える前記遺伝子発現レベルが、前記試料中に悪性メラニン形成細胞が存在することを示す、
方法。
(110)実施態様109に記載の方法において、
チロシナーゼ(配列ID番号:999)をコードする遺伝子の発現レベルを測定する段階、
を更に含む、方法。
(111)実施態様109に記載の方法において、
前記試料中で構成的に発現した遺伝子の発現レベルを測定する段階、
を更に含む、方法。
(112)実施態様110に記載の方法において、
前記遺伝子は、PBGD(配列ID番号:979)をコードする、方法。
(113)実施態様109に記載の方法において、
配列ID番号:29〜978から成る群から選ばれるpsidに対応するmRNAをコードする少なくとも1種の遺伝子の発現レベルを測定する段階、
を更に含む、方法。
(114)実施態様109〜113のいずれか1項に記載の方法において、
前記試料は、リンパ節から得られる、方法。
(115)実施態様114に記載の方法において、
前記リンパ節は、前哨リンパ節である、方法。
(116)実施態様109〜113のいずれか1項に記載の方法において、
前記試料は、生体組織検査法によって得られる、方法。
(117)実施態様109〜113のいずれか1項に記載の方法において、
手術中に実施される、方法。
(118)実施態様109〜113のいずれか1項に記載の方法において、
前記黒色腫は、微小転移巣である、方法。
(119)実施態様109〜113のいずれか1項に記載の方法において、
特異度および感度は、黒色腫の転移部を検出するのに十分である、方法。
(120)実施態様119に記載の方法において、
前記特異性は、ヘマトキシリン・エオジン染色(H&E)陰性リンパ節と免疫組織化学(IHC)陰性リンパ節との比較に基づき少なくとも95%である、方法。
(121)実施態様119に記載の方法において、
前記特異性は、ヘマトキシリン・エオジン染色陰性リンパ節と免疫組織化学陰性リンパ節との比較に基づき少なくとも97%である、方法。
(122)実施態様119に記載の方法において、
前記特異性は、ヘマトキシリン・エオジン染色陰性リンパ節と免疫組織化学陰性リンパ節との比較に基づき少なくとも99%である、方法。
(123)実施態様119に記載の方法において、
前記感度は、ヘマトキシリン・エオジン染色陽性リンパ節と免疫組織化学陽性リンパ節との比較に基づき少なくとも80%である、方法。
(124)実施態様119に記載の方法において、
前記感度は、ヘマトキシリン・エオジン染色陽性リンパ節と免疫組織化学陽性リンパ節との比較に基づき少なくとも85%である、方法。
(125)実施態様119に記載の方法において、
前記感度は、ヘマトキシリン・エオジン染色陽性リンパ節と免疫組織化学陽性リンパ節との比較に基づき少なくとも90%である、方法。
(126)実施態様119に記載の方法において、
前記特異性は、ヘマトキシリン・エオジン染色陰性リンパ節と免疫組織化学陰性リンパ節との比較に基づき少なくとも97%であり、かつ、前記感度は、ヘマトキシリン・エオジン染色陽性リンパ節と免疫組織化学陽性リンパ節との比較に基づき少なくとも85%である、方法。
(127)実施態様109〜113のいずれか1項に記載の方法において、
前記の所定のカットオフレベルは、悪性黒色腫を有する組織では、良性メラニン形成細胞または正常組織と比べて少なくとも2倍の過剰発現である、方法。
(128)実施態様109〜113のいずれか1項に記載の方法において、
遺伝子発現は、マイクロアレイまたは遺伝子チップによって測定される、方法。
(129)実施態様109〜113のいずれか1項に記載の方法において、
遺伝子発現は、前記試料から抽出したRNAのポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によって行われる核酸増幅によって決定される、方法。
(130)実施態様129に記載の方法において、
前記ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)生成物は、配列ID番号:25〜28の少なくとも1種を含有する、方法。
(131)実施態様129に記載の方法において、
前記PCR生成物は、蛍光化合物を含有する、方法。
(132)実施態様131に記載の方法において、
前記蛍光化合物は、Fam、Texas Red、Cal Red、C1、Cy5およびCy3から成る群から選ばれる、方法。
(133)実施態様132に記載の方法において、
前記蛍光化合物は、適用可能である、PLAB:Fam;L1CAM:Texas Red、または、Cal Red;チロシナーゼ:C1;PBGD:Cy5に対応する、方法。
(134)実施態様128に記載の方法において、
前記PCRは、逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR)である、方法。
(135)実施態様134に記載の方法において、
前記RT−PCRは、1種以上の内部対照試薬を更に含有する、方法。
(136)実施態様129に記載の方法において、
a.前記試料を均質化してホモジネートを生成する段階と、
b.RNA結合性物質を含有する基質、または、RNA結合物質が固定される基質に前記ホモジネートを接触させる段階と、
c.RNAを、前記RNA結合性物質に結合させる段階と、
d.あらゆる汚染物質、干渉物質および非結合RNAを除去するのに十分な条件の下、前記基質を洗浄する段階と、
e.前記基質から結合RNAを溶出する段階と、
によって、前記RNAが前記試料から抽出される、方法。
(137)実施態様109〜113のいずれか1項に記載の方法において、
前記試料中のメラニンを減少させる段階、
を更に含む、方法。
(138)実施態様136に記載の方法において、
前記試料を均質化してホモジネートを生成し、次いで、メラニンが付着するか、結合するか、または、固定されるマトリックスに前記ホモジネートを通過させることによって、メラニン濃度を減少させる、方法。
(139)実施態様136に記載の方法において、
前記マトリックスは、ポリマービーズを含有する、方法。
(140)実施態様136に記載の方法において、
前記マトリックスは、シリカを含有する、方法。
(141)実施態様136に記載の方法において、
前記RNAは、約8分間未満で抽出される、方法。
(142)実施態様136に記載の方法において、
前記RNAは、約6分間未満で抽出される、方法。
(143)実施態様109〜113のいずれか1項に記載の方法において、
遺伝子発現は、前記遺伝子によってコードされたタンパク質を測定することによって測定される、方法。
(144)実施態様143に記載の方法において、
前記タンパク質は、前記タンパク質に特異な抗体によって検出される、方法。
(145)患者を処置するプロトコルを決定する方法において、
a.前記患者から組織試料を得る段階と、
b.PLAB(配列ID番号:1)およびL1CAM(配列ID番号:2);または、
PLAB、L1CAMおよびNTRK3(配列ID番号:3)、
をコードする遺伝子の、前記試料中の発現レベルを測定する段階と、
を含み、
所定のカットオフレベルを超える前記遺伝子発現レベルが、前記試料中に黒色腫が存在することを示す、
方法。
(146)実施態様145に記載の方法において、
チロシナーゼ(配列ID番号:999)をコードする遺伝子の発現レベルを測定する段階、
を更に含む、方法。
(147)実施態様145に記載の方法において、
前記試料中で構成的に発現した遺伝子の発現レベルを測定する段階、
を更に含む、方法。
(148)実施態様147に記載の方法において、
前記遺伝子は、PBGD(配列ID番号:979)をコードする、方法。
(149)実施態様145に記載の方法において、
配列ID番号:29〜978から成る群から選ばれるpsidに対応するmRNAをコードする少なくとも1種の遺伝子の発現レベルを測定する段階、
を更に含む、方法。
(150)実施態様145〜149のいずれか1項に記載の方法において、
前記試料は、リンパ節から得られる、方法。
(151)実施態様150に記載の方法において、
前記リンパ節は、前哨リンパ節である、方法。
(152)実施態様145〜149のいずれか1項に記載の方法において、
前記試料は、生体組織検査法によって得られる、方法。
(153)実施態様145〜149のいずれか1項に記載の方法において、
手術中に実施される、方法。
(154)実施態様145〜149のいずれか1項に記載の方法において、
前記黒色腫は、微小転移巣である、方法。
(155)実施態様145〜149のいずれか1項に記載の方法において、
特異度および感度は、黒色腫の転移部を検出するのに十分である、方法。
(156)実施態様155に記載の方法において、
前記特異性は、ヘマトキシリン・エオジン染色(H&E)陰性リンパ節と免疫組織化学(IHC)陰性リンパ節との比較に基づき少なくとも95%である、方法。
(157)実施態様155に記載の方法において、
前記特異性は、ヘマトキシリン・エオジン染色陰性リンパ節と免疫組織化学陰性リンパ節との比較に基づき少なくとも97%である、方法。
(158)実施態様155に記載の方法において、
前記特異性は、ヘマトキシリン・エオジン染色陰性リンパ節と免疫組織化学陰性リンパ節との比較に基づき少なくとも99%である、方法。
(159)実施態様155に記載の方法において、
前記感度は、ヘマトキシリン・エオジン染色陽性リンパ節と免疫組織化学陽性リンパ節との比較に基づき少なくとも80%である、方法。
(160)実施態様155に記載の方法において、
前記感度は、ヘマトキシリン・エオジン染色陽性リンパ節と免疫組織化学陽性リンパ節との比較に基づき少なくとも85%である、方法。
(161)実施態様155に記載の方法において、
前記感度は、ヘマトキシリン・エオジン染色陽性リンパ節と免疫組織化学陽性リンパ節との比較に基づき少なくとも90%である、方法。
(162)実施態様155に記載の方法において、
前記特異性は、ヘマトキシリン・エオジン染色陰性リンパ節と免疫組織化学陰性リンパ節との比較に基づき少なくとも97%であり、かつ、前記感度は、ヘマトキシリン・エオジン染色陽性リンパ節と免疫組織化学陽性リンパ節との比較に基づき少なくとも85%である、方法。
(163)実施態様145〜149のいずれか1項に記載の方法において、
前記の所定のカットオフレベルは、悪性黒色腫を有する組織では、良性メラニン形成細胞または正常組織と比べて少なくとも2倍の過剰発現である、方法。
(164)実施態様145〜149のいずれか1項に記載の方法において、
遺伝子発現は、マイクロアレイまたは遺伝子チップによって測定される、方法。
(165)実施態様145〜149のいずれか1項に記載の方法において、
遺伝子発現は、前記試料から抽出したRNAのポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によって行われる核酸増幅によって決定される、方法。
(166)実施態様165に記載の方法において、
前記ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)生成物は、配列ID番号:25〜28の少なくとも1種を含有する、方法。
(167)実施態様165に記載の方法において、
前記PCR生成物は、蛍光化合物を含有する、方法。
(168)実施態様167に記載の方法において、
前記蛍光化合物は、Fam、Texas Red、Cal Red、C1、Cy5およびCy3から成る群から選ばれる、方法。
(169)実施態様168に記載の方法において、
前記蛍光化合物は、適用可能である、PLAB:Fam;L1CAM:Texas Red、または、Cal Red;チロシナーゼ:C1;PBGD:Cy5に対応する、方法。
(170)実施態様152に記載の方法において、
前記PCRは、逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR)である、方法。
(171)実施態様170に記載の方法において、
前記RT−PCRは、1種以上の内部対照試薬を更に含有する、方法。
(172)実施態様165に記載の方法において、
a.前記試料を均質化してホモジネートを生成する段階と、
b.RNA結合性物質を含有する基質、または、RNA結合物質が固定される基質に前記ホモジネートを接触させる段階と、
c.RNAを、前記RNA結合性物質に結合させる段階と、
d.あらゆる汚染物質、干渉物質および非結合RNAを除去するのに十分な条件の下、前記基質を洗浄する段階と、
e.前記基質から結合RNAを溶出する段階と、
によって、前記RNAが前記試料から抽出される、方法。
(173)実施態様145〜149のいずれか1項に記載の方法において、
前記試料中のメラニンを減少させる段階、
を更に含む、方法。
(174)実施態様173に記載の方法において、
前記試料を均質化してホモジネートを生成し、次いで、メラニンが付着するか、結合するか、または、固定されるマトリックスに前記ホモジネートを通過させることによって、メラニン濃度を減少させる、方法。
(175)実施態様174に記載の方法において、
前記マトリックスは、ポリマービーズを含有する、方法。
(176)実施態様174に記載の方法において、
前記マトリックスは、シリカを含有する、方法。
(177)実施態様172に記載の方法において、
前記RNAは、約8分間未満で抽出される、方法。
(178)実施態様172に記載の方法において、
前記RNAは、約6分間未満で抽出される、方法。
(179)実施態様145〜149のいずれか1項に記載の方法において、
遺伝子発現は、前記遺伝子によってコードされたタンパク質を測定することによって測定される、方法。
(180)実施態様179に記載の方法において、
前記タンパク質は、前記タンパク質に特異な抗体によって検出する、方法。
(181)患者を処置するプロトコルを決定する方法において、
a.前記患者から組織試料を得る段階と、
b.配列ID番号:4〜6もしくは配列ID番号:7〜9、および、配列ID番号:10〜12もしくは配列ID番号:13〜15;または、
配列ID番号:4〜6もしくは配列ID番号:7〜9、および、配列ID番号:10〜12もしくは配列ID番号:13〜15、および、配列ID番号:16〜18、
から成る群から選ばれるプライマー/プローブのセットによって同定される遺伝子の、前記試料中の発現レベルを測定する段階と、
を含み、
所定のカットオフレベルを超える前記遺伝子発現レベルが、前記試料中に黒色腫が存在することを示す、
方法。
(182)実施態様181に記載の方法において、
チロシナーゼ(配列ID番号:999)をコードする遺伝子の発現レベルを測定する段階、
を更に含む、方法。
(183)実施態様181に記載の方法において、
前記試料中で構成的に発現した遺伝子の発現レベルを測定する段階、
を更に含む、方法。
(184)実施態様181に記載の方法において、
前記遺伝子は、PBGD(配列ID番号:979)をコードする、方法。
(185)実施態様184に記載の方法において、
配列ID番号:29〜978から成る群から選ばれるpsidに対応するmRNAをコードする少なくとも1種の遺伝子の発現レベルを測定する段階、
を更に含む、方法。
(186)実施態様181〜185のいずれか1項に記載の方法において、
前記試料は、リンパ節から得られる、方法。
(187)実施態様186に記載の方法において、
前記リンパ節は、前哨リンパ節である、方法。
(188)実施態様181〜185のいずれか1項に記載の方法において、
前記試料は、生体組織検査法によって得られる、方法。
(189)実施態様181〜185のいずれか1項に記載の方法において、
手術中に実施される、方法。
(190)実施態様181〜185のいずれか1項に記載の方法において、
前記黒色腫は、微小転移巣である、方法。
(191)実施態様181〜185のいずれか1項に記載の方法において、
特異度および感度は、黒色腫の転移部を検出するのに十分である、方法。
(192)実施態様191に記載の方法において、
前記特異性は、ヘマトキシリン・エオジン染色(H&E)陰性リンパ節と免疫組織化学(IHC)陰性リンパ節との比較に基づき少なくとも95%である、方法。
(193)実施態様191に記載の方法において、
前記特異性は、ヘマトキシリン・エオジン染色陰性リンパ節と免疫組織化学陰性リンパ節との比較に基づき少なくとも97%である、方法。
(194)実施態様191に記載の方法において、
前記特異性は、ヘマトキシリン・エオジン染色陰性リンパ節と免疫組織化学陰性リンパ節との比較に基づき少なくとも99%である、方法。
(195)実施態様191に記載の方法において、
前記感度は、ヘマトキシリン・エオジン染色陽性リンパ節と免疫組織化学陽性リンパ節との比較に基づき少なくとも80%である、方法。
(196)実施態様191に記載の方法において、
前記感度は、ヘマトキシリン・エオジン染色陽性リンパ節と免疫組織化学陽性リンパ節との比較に基づき少なくとも85%である、方法。
(197)実施態様191に記載の方法において、
前記感度は、ヘマトキシリン・エオジン染色陽性リンパ節と免疫組織化学陽性リンパ節との比較に基づき少なくとも90%である、方法。
(198)実施態様191に記載の方法において、
前記特異性は、ヘマトキシリン・エオジン染色陰性リンパ節と免疫組織化学陰性リンパ節との比較に基づき少なくとも97%であり、かつ、前記感度は、ヘマトキシリン・エオジン染色陽性リンパ節と免疫組織化学陽性リンパ節との比較に基づき少なくとも85%である、方法。
(199)実施態様181〜185のいずれか1項に記載の方法において、
前記の所定のカットオフレベルは、悪性黒色腫を有する組織では、良性メラニン形成細胞または正常組織と比べて少なくとも2倍の過剰発現である、方法。
(200)実施態様181〜185のいずれか1項に記載の方法において、
遺伝子発現は、マイクロアレイまたは遺伝子チップによって測定される、方法。
(201)実施態様181〜185のいずれか1項に記載の方法において、
遺伝子発現は、前記試料から抽出したRNAのポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によって行われる核酸増幅によって決定される、方法。
(202)実施態様201に記載の方法において、
前記ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)生成物は、配列ID番号:25〜28の少なくとも1種を含有する、方法。
(203)実施態様201に記載の方法において、
前記PCR生成物は、蛍光化合物を含有する、方法。
(204)実施態様203に記載の方法において、
前記蛍光化合物は、Fam、Texas Red、Cal Red、C1、Cy5およびCy3から成る群から選ばれる、方法。
(205)実施態様204に記載の方法において、
前記蛍光化合物は、適用可能である、PLAB:Fam;L1CAM:Texas Red、または、Cal Red;チロシナーゼ:C1;PBGD:Cy5に対応する、方法。
(206)実施態様201に記載の方法において、
前記PCRは、逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR)である、方法。
(207)実施態様206に記載の方法において、
前記RT−PCRは、1種以上の内部対照試薬を更に含有する、方法。
(208)実施態様201に記載の方法において、
a.前記試料を均質化してホモジネートを生成する段階と、
b.RNA結合性物質を含有する基質、または、RNA結合物質が固定される基質に前記ホモジネートを接触させる段階と、
c.RNAを、前記RNA結合性物質に結合させる段階と、
d.あらゆる汚染物質、干渉物質および非結合RNAを除去するのに十分な条件の下、前記基質を洗浄する段階と、
e.前記基質から結合RNAを溶出する段階と、
によって、前記RNAが前記試料から抽出される、方法。
(209)実施態様181〜185のいずれか1項に記載の方法において、
前記試料中のメラニンを減少させる段階、
を更に含む、方法。
(210)実施態様209に記載の方法において、
前記試料を均質化してホモジネートを生成し、次いで、メラニンが付着するか、結合するか、または、固定されるマトリックスに前記ホモジネートを通過させることによって、メラニン濃度を減少させる、方法。
(211)実施態様210に記載の方法において、
前記マトリックスは、ポリマービーズを含有する、方法。
(212)実施態様210に記載の方法において、
前記マトリックスは、シリカを含有する、方法。
(213)実施態様208に記載の方法において、
前記RNAは、約8分間未満で抽出される、方法。
(214)実施態様208に記載の方法において、
前記RNAは、約6分間未満で抽出される、方法。
(215)実施態様181〜185のいずれか1項に記載の方法において、
遺伝子発現は、前記遺伝子によってコードされたタンパク質を測定することによって測定される、方法。
(216)実施態様215に記載の方法において、
前記タンパク質は、前記タンパク質に特異な抗体によって検出される、方法。
(217)組成物において、
配列ID番号:4〜6、配列ID番号:7〜9、配列ID番号:46〜48、配列ID番号:13〜15、配列ID番号:16〜18、配列ID番号:19〜21、および、配列ID番号:22〜24から成る群から選ばれる少なくとも1つのプライマー/プローブのセットを含有する、組成物。
(218)組成物において、
配列ID番号:25〜28から成る群から選ばれる少なくとも1つのアンプリコン(amplicon:増幅される産物)を含有する、組成物。
(219)組織試料中に黒色腫が存在するか否かを決定するアッセイを行うためのキットにおいて、
核酸増幅用および検出用の試薬を備えた、キット。
(220)実施態様219に記載のキットにおいて、
前記試薬が、配列ID番号:1〜3から成る群から選ばれるmRNAをコードする少なくとも1種の遺伝子の発現を検出するための配列を有するプライマーを含有している、キット。
(221)実施態様219に記載のキットにおいて、
RT−PCR試薬を備えている、キット。
【0133】



















【図面の簡単な説明】
【0134】
【図1】データ解析の流れ図である。
【図2】全ての試料の中に少なくとも2つの「プレゼント」コールを有する15,795個の遺伝子に関する階層的クラスタリングである。各々のカラムは試料であり、各々の列(row)は遺伝子である。赤色(red)は発現上昇(up-regulation)であり、緑色(green)は発現低下(down-regulation)である。紫色(purple)は黒色腫試料であり、黄色(yellow)は良性母斑試料であり、青色(blue)は正常皮膚試料である。
【図3】選定された遺伝子のマイクロアレイ発現(A)およびリアルタイムRT−PCRによる確認データ(B)である。左から最初の14個の試料は黒色腫試料(赤色)であり、次の7個は良性母斑試料(黄色)であり、最後の5個は正常皮膚試料(青色)である。マイクロアレイ・プロットのx軸は強度値を示し、PCRプロットのx軸は2ΔCt[式中、2ΔCtはCt(標的遺伝子)−Ct(PBGD)である]である。
【図4】インジェニュイティ(Ingenuity)(登録商標)経路解析ソフトウェアアプリケーション(Pathway Analysis Software Application)から採用された、アミロイドプロセシング経路である。黒色腫で発現上昇した遺伝子は赤色であり、黒色腫で発現低下した遺伝子は緑色である。各々の遺伝子記号は、黒色腫試料と良性母斑試料/正常皮膚試料との間の発現レベルのフォールドチェンジ(fold change)を伴う。
【図5】PLABおよびL1CAM(A)と、従来の黒色腫マーカー[gp100、チロシナーゼ(配列ID番号:999)およびMART1](B)とのワンステップ定量的RT−PCRアッセイである。各々のプロットのx軸は、新規なマーカーまたは従来のマーカーに対するスコアを表わしている。各々の試料のカテゴリーに対する中央値スコアが表示されている。各々のプロットには、正常皮膚試料(緑色)および良性母斑試料(赤色)に基づく2つのカットオフレベルが表示されている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
黒色腫を同定する方法において、
a.組織試料を得る段階と、
b.PLAB(配列ID番号:1)およびL1CAM(配列ID番号:2);または、
PLAB、L1CAMおよびNTRK3(配列ID番号:3)、
に対応するmRNAをコードする遺伝子の、前記試料中の発現レベルを測定する段階と、
を含み、
所定のカットオフレベルを超える前記遺伝子発現レベルが、前記試料中に黒色腫が存在することを示す、
方法。
【請求項2】
黒色腫を同定する方法において、
a.組織試料を得る段階と、
b.配列ID番号:4〜6もしくは配列ID番号:7〜9、および、配列ID番号:10〜12もしくは配列ID番号:13〜15;または、
配列ID番号:4〜6もしくは配列ID番号:7〜9、および、配列ID番号:10〜12もしくは配列ID番号:13〜15、および、配列ID番号:16〜18、
から成る群から選ばれるプライマー/プローブのセットによって認識されるmRNAをコードする遺伝子の、前記試料中の発現レベルを測定する段階と、
を含み、
所定のカットオフレベルを超える前記遺伝子発現レベルが、前記試料中に黒色腫が存在することを示す、
方法。
【請求項3】
悪性メラニン形成細胞を良性メラニン形成細胞から識別する方法において、
a.組織試料を得る段階と、
b.PLAB(配列ID番号:1)およびL1CAM(配列ID番号:2);または、
PLAB、L1CAMおよびNTRK3(配列ID番号:3)、
をコードする遺伝子の、前記試料中の発現レベルを測定する段階と、
を含み、
所定のカットオフレベルを超える前記遺伝子発現レベルが、前記試料中に悪性メラニン形成細胞が存在することを示す、
方法。
【請求項4】
悪性メラニン形成細胞を良性メラニン形成細胞から識別する方法において、
a.組織試料を得る段階と、
b.配列ID番号:4〜6もしくは配列ID番号:7〜9、および、配列ID番号:10〜12もしくは配列ID番号:13〜15;または、
配列ID番号:4〜6もしくは配列ID番号:7〜9、および、配列ID番号:10〜12もしくは配列ID番号:13〜15、および、配列ID番号:16〜18、
から成る群から選ばれるプライマー/プローブのセットによって認識される遺伝子の、前記試料中の発現レベルを測定する段階と、
を含み、
所定のカットオフレベルを超える前記遺伝子発現レベルが、前記試料中に悪性メラニン形成細胞が存在することを示す、
方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2008−504034(P2008−504034A)
【公表日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−518362(P2007−518362)
【出願日】平成17年6月24日(2005.6.24)
【国際出願番号】PCT/US2005/022846
【国際公開番号】WO2006/002433
【国際公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【出願人】(505060347)ベリデックス・エルエルシー (43)
【氏名又は名称原語表記】Veridex,LLC
【住所又は居所原語表記】33 Technology Drive,Warren,NJ 07059,U.S.A.
【Fターム(参考)】